IQとは
IQとはIntelligence Quotientの略で、知能指数と呼ばれます。一般的に知能指数といえば頭の良さを示すものとイメージされることが多いです。しかし、実は心理学では知能の定義は研究者によって異なり、共通した定義は存在しません。
有名な知能検査であるウェクスラー式知能検査を作ったウェクスラー(Wechsler, D.)は「知能とは目的に沿った行動をしたり、効率的に環境に対処する能力」というように定義して、言語能力や論理的思考、問題解決能力、記憶力などを知能を構成するものとして多角的に測定しました。しかしそうすると、発明王エジソンに代表される社会環境に適応できなかった歴史上の偉人は知能が低かったことになってしまいます。そのため同語反復に近いですが、知能とは知能検査で測定されるものであり、知能検査で測定されたものが知能指数であるという定義がなされています。
IQや知能検査の始まりは、1905年にさかのぼります。フランス文部省から知的発達の遅れのある子どもたちを識別してほしいという依頼から、ビネー(Binet, A.)は医師シモン(Simon, T.)と子どもの知的発達を調べるための検査を作りました。これが世界最初の知能検査です。
EQとは
IQの明確な定義は存在しないものの、IQは情報を処理する能力であり学力の高さなどと関連することが分かっています。しかし、社会環境に適応するにあたって学力だけでは不十分だということが分かってきました。そこで注目を集めたのがEQ(Emotional Intelligence Quotient;略称EQ)です。
IQと比べるとEQは比較的最近の概念であり、1990年代にアメリカの心理学者ピーター・サロヴェイ(Salovey, P.)とジョン・メイヤー(Mayer, J. D.)によって提唱されました。Emotional、すなわち自分や他者の感情を適切に理解したり、コントロールしたり、伝えたりする能力がEQです。
正確にIQを測定するには、研究によって信頼性や妥当性が確認された手順で検査道具を使う必要があります。しかしEQはアンケートで測定できることが多いため、IQと比べると簡単に測定できると言えます。
IQとEQの適性の違い
IQとEQはどちらも個人の成功や幸福に重要な役割を果たしますが、その適性は異なります。
例えば、IQが高い人は知的能力が高いことから、研究者やエンジニアのように複雑な問題を解決する職業に向いていることが多いです。EQが高い人は感情を察したり共感したりする能力が高いため、カウンセラーのような対人援助職が向いています。
文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒