フローとは
フローとは、何らかの活動に完全に集中・没頭している状態です。例えば時が経つのを忘れてしまうほどに、ピアノの演奏やバッティング練習、囲碁などに集中しているとき、その人はフロー状態にあると言えます。
フローという概念は、ハンガリー出身のアメリカの心理学者チクセントミハイ(Csikszentmihalyi, M.)によって提唱されました。彼がインタビュー研究を行ったときに、多くのアーティストやアスリートなどが自身の専門とする分野で活動している最中を「流れ(flow)に運ばれた」と表現していたことが、フローという名前の由来です。
フローが注目されるようになった背景
チクセントミハイがフローを提唱した1970年代では、フローは全く関心を寄せられませんでした。フローが注目されたのは、1997年以降です。そのきっかけはアメリカにおける医療・保険制度の破綻です。コストパフォーマンスの観点から、疾病を発症してから対応するのではなく、疾病を予防する方向に社会が目を向けました。そのなかで、人間の強さをはじめとする資質・資源を解明して、個人の良さを育むポジティブ心理学が台頭しました。ポジティブ心理学を代表する概念のひとつとして、フローも注目されたのです。フローは、現在では心理学だけではなく創造性やレジャー、労働、発達、教育など幅広い学術領域で取り扱われています。
フローと類似する概念
フローと類似する概念として、没入やゾーンがあります。
没入もフローと同様に深い集中状態を指します。両者の違いは集中する対象です。没入では読書や映画鑑賞など自身の行動目標が設定されない活動も含まれます。
ゾーンは、最高のパフォーマンスを発揮している状態や、完璧な運動・判断を行い全力を出し切っていると感じられる状態を指します。ゾーンはスポーツやパフォーマンス場面で用いられることが多く、フローと異なり音楽や学習場面などでは用いられません。
文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒