援助行動とは

困っている人を助ける、社会に貢献する行動を取るなど、他者の利益のために行われる行動を、心理学では援助行動と呼びます。他者に利益をもたらすことを意図した行動は向社会的行動と呼ばれますが、援助行動はそのひとつにあたります。なお、援助行動以外の向社会的行動には、共通の目標のために複数人が協力する協力行動や、感謝の気持ちを伝える感謝行動などがあります。

援助行動の説明理論

援助行動の規定要因は援助する人や援助される人に関するもの、援助する場に関するもの、社会規範など多岐にわたります。

そのなかでも援助行動の説明理論で特に有名なものは、ラタネとダーレーが提唱した緊急事態における介入に関するモデルです。彼らの研究によると、大けがをしていると思われる事態であっても、他者が存在することで援助行動を取りにくくなるという傍観者効果が明らかにされました。

ほか、援助行動が生じるか否かを分析するモデルとして、社会的交換理論の立場もあります。この理論によると、労力や時間などの援助を行うことのコスト、感謝や自尊心の向上といった援助したことによる報酬、非難や良心の呵責などの援助を行わないことに対するコストを鑑みて、援助を行うか否かが判断されることになります。

援助行動は利他的か?

援助行動の中でも、自己の利益を無視して完全に他者のために行われる行動は利他的行動や愛他的行動と呼ばれ、自分の利益を意図した人助けは利己的行動と呼ばれます。ただ、人のために見える行動でも長期的に見ると集団利益となり、巡り巡って自分の利益となることもあります。そのため、援助行動を利他的か利己的かを区分することは困難と言えるでしょう。

文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒
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