学習・言語心理学とは
学習・言語心理学は、私たちがどのように学び、言葉を使い、理解するかを研究する心理学の一分野です。学習心理学は、新たな行動や知識、スキルをどのように獲得し、記憶し、応用するかを探ります。また言語心理学は、言語の習得や使用、理解のメカニズムを研究します。
学習心理学や言語心理学のはじまり
学習心理学といえば、ベルを鳴らすとよだれを垂らすようになった「パブロフの犬」がとても有名です。しかし、心理学の学習研究はドイツの心理学者エビングハウス(Ebbinghaus, H.)の記憶実験に端を発します。エビングハウスの実験はエビングハウス自らが被験者となり、一度覚えた無意味なつづりが時間経過によってどのように忘却されるかを調べるというものでした。エビングハウスの記憶実験の後、20世紀初頭にロシアの生理学者パブロフの(Pavlov, I. P.)のパブロフの犬こと条件反射の実験が続きます。
一方、言語心理学の研究が盛んになったのはもう少し遅い時期です。最初は実験心理学の創始者であるヴント(Wundt, W.)を中心に「言語の心理学」という心理学の一部門が研究されていました。それが言語心理学に発展したのは、1950年代頃に認知革命が起きてからです。アメリカの言語学者チョムスキー(Chomsky, N.)が生成文法理論を提唱したのがスタートと言えるでしょう。それまでは言語について、子どもは白紙の状態で生まれ、両親など周りの人間の言葉を聞くことで言語を覚えていくと考えられてきました。しかし、チョムスキーの理論によると、そもそも脳には音と意味を結び付けるシステムとして「文法」が備わっています。つまり、言語は人間という種に生まれつき備わっているということです。
学習・言語心理学の応用
学習心理学や言語心理学は、特に教育やコミュニケーションの向上に大きく貢献しています。例えば、学習心理学の知見は効果的な学校教育や企業研修の方法の開発に役立っています。また言語心理学の知識は、言語療法にも応用されています。言語障害を持つ人々に効果的な治療法を提供するためには、言語獲得のプロセスを理解することが重要です。
文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒