自閉スペクトラム症とは

自閉スペクトラム症 (Autism Spectrum Disorder; ASD)とは、コミュニケーションを取ることが苦手だったり、特定の場所や人、空間に対して強いこだわりを抱いたりするなどの特徴を持つ神経発達症(いわゆる発達障害)のひとつです。

自閉スペクトラム症の特徴は多岐にわたりますが、以下が典型的です。

•コミュニケーションの困難:相手の表情や身振りを読み取るのが難しい。相手がどのように考えているか察することが困難なため、会話の中で適切に反応するのが苦手。

•反復行動:体をゆするなど同じ行動を繰り返す。水道水から流れる水を見つめ続けるなど、特定の物事に強いこだわりを持つこともある。

•感覚の過敏さ:音や光などを過敏に感じてしまう。

個々の特徴や症状は非常に多様であり、自閉スペクトラム症ではない人でも似たような特徴が見られることが少なくありません。そのため、連続体という意味を持つ「スペクトラム」という言葉が名前に付いています。

自閉スペクトラム症のはじまり

自閉スペクトラム症の概念は、1943年にアメリカの児童精神科医カナー(Kanner, L.)博士が「自閉症」という言葉を初めて使用したことから始まります。彼は、自閉症を持つ子どもたちの独特な行動パターンを観察し、その特徴を記録しました。

同じ時期1944年にオーストリアの小児科医ハンス・アスペルガー博士は、特に言葉や知的能力の問題のない子どもたちの間で見られる同様の症状について記述しました。これが「アスペルガー症候群」として知られるようになりました。今日では、自閉症やアスペルガー症候群などは「自閉スペクトラム症」というひとつの枠組みにまとめられています。

他の神経発達症(発達障害)

自閉スペクトラム症のほか、神経発達症(発達障害)で代表的なものには、注意欠陥・多動性障害 (Attention Deficit Hyperactivity Disorder;ADHD) や学習障害(LD)があります。

・ADHD:注意力の欠如や、多動性、衝動性を特徴とする神経発達症です。自閉スペクトラム症と異なり、社会的コミュニケーションの障害は必ずしも見られません。

・学習障害:文字を読めない、計算ができないなど特定の学習分野で困難を抱える神経発達症です。ADHDと同様に、社会的なコミュニケーションの障害は見られないことが多いです。

ただし、神経発達症(発達障害)の原因のひとつに脳の発達のちがいによる特性がありますが、自閉スペクトラム症とADHD、学習障害では重複する特性があります。そのため、自閉スペクトラム症であってもADHDや学習障害など他の神経発達症の特徴も見られることがあります。

文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒
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