離人感とは
離人感とは、自分自身や周りのものから現実感を感じられない状態です。「いま友達と会話しているけど、その会話がテレビの中の話のように遠いものに感じられる」、「どこか淡々と行動して一日が終わった」といった現実感が薄い感じが離人感の状態です。離人感は統合失調症などの精神疾患で見られることもありますが、思春期や青年期など多感な時期にも見られます。そのため、離人感があるからといって必ずしも病的な状態であるとは限りません。
離人感が生じる原因
離人感が生じる原因のひとつとして、非常に強いストレスが挙げられます。例えば、大地震の被災者にも離人感はよく見られます。自分の家が地震被害に遭ったとき、すぐに何か対処しなければなりません。しかし、自分の家が被害に遭ったということと向き合うのは非常に辛いことです。そこで現実を薄れさせることで自分の心を守ろうとして離人感が生じます。
思春期や青年期で離人感が見られやすいのは、多感な時期であるためにストレスを強く感じやすいからです。ストレスを強く感じるけれどそれに対処する能力が未熟であるので、自分の心を守ろうとして離人感が生じるのです。
類似概念
離人感のように出来事から心理的に距離を取ることとして、メタ認知が挙げられます。メタ認知の例として、古代ギリシアの哲学者ソクラテス(Socrates)の無知の知が挙げられます。無知の知には「知識のない自分」と「『知識がない自分』を理解している自分」が存在します。この後者の視点がメタ認知です。メタ認知のように出来事から離れることで視野を広げられたり、出来事によって感情的になることを防げるというメリットがあります。
距離を取ることによって出来事のストレスを弱めるという点は、離人感とメタ認知で共通しています。ただし、離人感は無意識的に行われる自己防衛であるのに対して、メタ認知はトレーニングによって意識的に使えるようになるスキルという点で違います。
文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒