ユーモア(笑い)とは

ユーモアとは、他人を楽しませたり、笑わせたりするための手段です。
ジョークや面白い話、機知に富んだ言葉遊びなどがユーモアに含まれます。
ただし、ユーモアとは何か、笑いとは何かを学術的に定義することは容易ではありません。それというのも、ユーモアを構成する要因は多様であり、一言に「笑い」と言っても、それが意味する体験が必ずしも同一現象を指すとは限らないからです。

様々なユーモア(笑い)の理論

様々な研究者がユーモア(笑い)の理論を提唱しています。

昔の理論として、1600年代に提唱されたホッブズの理論があります。
この理論では、「笑いとは、他者や昔の自分の上手くできなかったことをけなすことから生じる優越感の結果である」と考えられています。
例えば、他者がうっかりミスをしたときについ笑ってしまうことがありますが、これはホッブズの理論に基づいたものです。つまり、笑いには優越感や嘲笑の側面が含まれるとしています。
また、ホッブズの理論を変形させたものとして、ベルグソンの理論があります。
ベルグソンによると、「本来人間は流動的な命を持った存在であるはずなのに、機械的な硬直性が見られる状況でおかしいと感じ、笑いが生じる」と考えました。
例えば、世界的なコメディアンであるチャップリンの動画には滑稽な歩き方が見られますが、これもベルグソンのいう笑いと言えるかもしれません。

ユーモア(笑い)の治療効果を提唱したのは、精神分析の創始者フロイトと言えます。本来性的なものや攻撃的な衝動は心の奥底に抑えておくべきものです。
しかし、ジョークの中では性的なものや攻撃的なものの表出が許され、それまで頑張って抑え込んでいたものが笑いとして発散されるとフロイトは考えました。

臨床場面におけるユーモア(笑い)

笑いは、私たちの体と心に良い影響を与えると言われています。例えば、笑うことでストレスホルモンが減少し、免疫力が向上することが多くの研究で示されています。

臨床場面でユーモア(笑い)を扱う職種として、クリニクラウンがあります。
クリニクラウンとは、病院(クリニック)を訪問して入院生活を送っている子どもたちに笑顔を届ける道化師(クラウン)のことです。有名なクリニクラウンはアメリカの医師パッチ・アダムスです。彼は、笑いを治療に活かそうとして道化師活動を始めました。2005年には日本でもクリニクラウンのNPO法人が設立され、活動しています。

文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒
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