「やる気のある従業員が少ない」
「ストレスチェックで高ストレス者となる従業員が多い」
組織の力は人によって発揮されるもの。そのため、上記のような従業員がいると企業としては困ってしまいます。従業員を、やる気があって生産性の高い状態に保つにはどのようにすればいいのか……。
この記事では従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントの違いやそれぞれを高める意義について述べます。従業員教育に困っている経営者の方や人事部の担当者の方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
「従業員エンゲージメント」「ワークエンゲージメント」とは
はじめに従業員エンゲージメント、ワークエンゲージメントそれぞれの言葉について説明いたします。
従業員エンゲージメント
従業員エンゲージメントとは、従業員と会社の結びつきの強さを表す言葉です。従業員エンゲージメントが高いと組織に対する愛着や貢献意識が高く、放っておいても組織がよくなるようなアクションを起こしてくれます。少し古い言葉に愛社精神という言葉がありますが、これは会社と従業員の上下関係を前提としているため、従業員エンゲージメントとは異なるものです。
評価には従業員エンゲージメント指数を用います。これは会社への熱意、信頼度、愛着度を数値化したもので、会社と従業員との結びつきの強さを示します。
ワークエンゲージメント
ワークエンゲージメントはオランダのユトレヒト大学のシャウフェリ教授らによって確立された概念であり、仕事に対するポジティブな心理状態を表します。
ワークエンゲージメントは「ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度(UWES)」を用いて評価されます。これは従業員に対してワークエンゲージメントの構成要素(熱意、没頭、活力)に関する質問をして、ワークエンゲージメントを数値化して評価するものです。質問内容は※2を参照してください。
※2:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析 人手不足の下で「働き方」をめぐる課題について」
二つのエンゲージメントの違い
これら二つのエンゲージメントの性質は似ていますが、情熱を向ける先が異なるのです。
従業員エンゲージメントはあくまでも組織に対する情熱です。この組織が好き、この組織のためなら多少無理してでも頑張れるというのが、従業員エンゲージメントです。
一方、ワークエンゲージメントはあくまでも仕事に対する情熱です。目の前の仕事が好きで一生懸命になってしまうのです。
二つのエンゲージメントの違いをふまえた上で、それぞれのエンゲージメントを高める意味を見ていきましょう。
従業員エンゲージメントはなぜ高い方がいいのか
従業員エンゲージメントが高いことのメリットはいくつかあります。
一つ目は自己肯定感が高まることです。
従業員エンゲージメントが高いと企業活動に自分も参画できているという満足感が高まり、これが組織に対する自己肯定感(自分がこの組織に必要とされている実感)に繋がります。
二つ目は心身ともに健康でいられることです。従業員エンゲージメントが高いと組織をより良くするための行動意欲が高くなります。意欲が高いというのは健康である証拠です。
ワークエンゲージメントの向上が企業に与える影響
ワークエンゲージメントの向上は、企業にどのような影響を与えるのでしょうか?
離職率、転職率の低下による人材定着率の向上
ワークエンゲージメントが高まると仕事そのものが面白くなります。そのため、精神的なストレスや疲労度が軽減されるばかりでなく優秀な人材の流出防止にもつながるでしょう。
イノベーション
ワークエンゲージメントが高まると、より良い仕事をしよう、より良い改善をしようという思いが強くなります。そのため、今までなかったような画期的な商品のアイデアを思いついたり、今まで無理だと思われていた課題のブレイクポイントを発見したりとイノベーション誕生の確率も高くなるでしょう。
ワークエンゲージメントを高める方法と必要な要素
高める方法
多様な働き方の導入
仕事に没頭したくてもできない環境の方は多くいます。子どもが小さくお世話に時間を取られたり、親の介護などで働く時間や場所が制限される場合もあります。そのような方のために仕事に没頭できる環境を整備しましょう。
人事評価の公正化
いくら没頭できる仕事で活力が得られるとしても、適正な評価をされなければいつかその情熱も冷めていくでしょう。仕事の評価を適正かつ公平にするのは難しいものですが、頑張っている従業員の努力を無駄にしないようにするためにも、人事評価制度を整備しましょう。
必要な要素
ワークライフバランス
いくらワークエンゲージメントが高くても仕事に没頭するあまり休息を忘れては、いつか心身の健康状態は悪くなっていきます。休むのも仕事のうち、という考えを従業員に広く浸透させ、働くときと休むときのメリハリを付けられるように教育しましょう。
従業員の内省の向上
仕事と向き合うのはあくまでも自分自身です。内省して仕事の質が改善することにより、ワークエンゲージメントはより高くなっていくのです。
仕事の資源の豊富さ
人は仕事が豊富にあるとワークエンゲージメントが高くなるといわれています(※1)。仕事の資源とはたとえば、実施した仕事へのフィードバックや上司によるコーチングなどのことです。業務の支援体制ともいえるでしょう。
※1:厚生労働省「第2-(3)-8図 仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)とワーク・エンゲイジメントについて」
まとめ
この記事では従業員エンゲージメント、ワークエンゲージメントについて述べてきました。
いずれのエンゲージメントも高めることで、従業員にとっての組織や仕事の捉え方が良くなり、従業員本人のためになります。その結果、仕事の質が上がって組織全体の力がより強くなるのです。
二つのエンゲージメントを高めて、より充実した人生を送りましょう。