現代社会はストレス社会ともいわれています。
日常生活の中では誰もが少なからずストレスを感じる機会はあり、身近な問題のひとつといえるでしょう。
心身に現れる段階的なストレス反応に注目し、適切な対処を取ることが必要です。
この記事ではストレスの原因・種類について、またストレス反応の段階や具体的なサインについても解説します。
ストレスの原因
ストレスの原因を、4つのストレッサーとして分類し解説します。ストレスを感じた際は、ストレッサーという切り口で原因を探してみることをおすすめします。
物理的ストレッサー
物理的ストレッサーとは、環境や身体活動などから生じるストレスの一種です。例えば、暑さ・寒さ・騒音・振動・有害な化学物質・身体的な負担などが代表例となります。
物理的ストレッサーの影響を軽減するためには、原因を特定し、回避や対処するための計画を立てることが大切です。
例えば、暑さに敏感な場合は通気性の良い衣類や涼しい屋内を選ぶ、騒音に敏感な場合はノイズキャンセリングヘッドホンの使用するなど、物理的ストレッサーを軽減する対策を講じましょう。
生物的ストレッサー
生物的ストレッサーとは、細菌・ウイルス・花粉など、生体の免疫反応を引き起こす刺激を指します。生物的ストレッサーにより、身体的にはアレルギー・喘息・肺炎・インフルエンザなどの健康問題を引き起こすケースも少なくありません。精神的にも不安・うつ病・睡眠障害を引き起こす可能性があるので注意しましょう。
アレルギーのある場合の対処法としては、アレルゲンを避けたり、抗ヒスタミン薬やステロイドを使用したりなど、アレルギーを管理するための措置を講じます。風邪やインフルエンザにかかりやすい場合には、手洗いやうがいをはじめ病気の人との接触を避けるなど、感染を防ぐための工夫を行います。
化学的ストレッサー
化学的ストレッサーとは、環境中の化学物質や薬物が原因で生じるストレスの一種です。化学物質は、空気・水・土壌から体内に取り込まれる可能性があります。例えば、タバコの煙やにおいの強い食べ物にも該当します。化学物質は体内で化学反応を引き起こし、心身の健康に悪影響を及ぼす恐れがあります。大気汚染がある場合は、汚染がひどい地域から離れたり、空気清浄機を使用したりするとよいでしょう。水質汚染の場合は、浄水器やウォーターサーバーの設置が有効です。早めに原因を特定し、対策をとることが必要です。
心理・社会的ストレッサー
心理・社会的ストレッサーは、仕事・家庭など人間が社会生活を営むうえで生じるものです。例えば、締め切り・ノルマ・問題解決に追われている場合などに生じます。社会生活において、心理・社会的ストレッサーが生まれる場面は多く、上手に付き合っていかなければなりません。
心理・社会的ストレッサーは対策を講じることで、軽減することができます。仕事で大きなプレッシャーを感じた時には、上司や同僚に相談したり、休暇を取ったりなどの対応がおすすめです。人間関係に問題がある場合には、カウンセリングを受けるなど問題を解決するための措置を検討しましょう。
ストレスが生じると身体にはどのような影響があるか
ストレスが生じることによって、私たちの身体にはさまざまな影響が起こります。ストレスの影響はストレス反応として、身体だけではなく心や行動にも現れます。
ストレス反応には3種類あり、心に生じる反応を「心理的反応」、身体に起こる反応を「身体的反応」、行動面での反応は「行動的反応」といいます。ストレス反応を見逃さず、適切に対処することが大切です。
どのような段階を経て疾患となるのか
次に、ストレスはどのような段階を経て疾患になるのかを説明します。
ストレスは、1936年にカナダのハンス・セリエ博士により「多様なストレッサーによって生じたさまざまな生体防衛反応」として定義されました。そして、ストレスへの反応として定義されたのが「汎適応症候群(GAS)」です。汎適応症候群では、ストレスが発生してからの時間経過と適応状態を「警告反応期」「抵抗期」「疲憊期」の三段階で説明しています。
警告反応期
警告反応期は、生体が突然有害なストレスにさらされた際に生じる反応です。警告反応期はショック相と反ショック相に分類できます。ショック相は、ストレスにさらされたとき、生体がショック状態を起こしていることを意味します。血圧や血糖値が低下して、筋肉の緊張が抑制されるなどの現象が見られ、それが数時間~1日ほど持続することが特徴です。
一方、反ショック相は突然のショックから立ち直り、ストレスに対する適応反応が本格化した状態です。ショック相とは逆に血圧や血糖値が上昇します。
抵抗期
抵抗期は、有害なストレスに対しての抵抗力が増している段階です。ストレッサーと抵抗力が拮抗している状態で、肉体的にも心理的にも安定している時期です。この時期にストレッサーを弱める、もしくは取り除くことができれば健康な状態を取り戻すことができます。しかし、抵抗期にストレッサーに抵抗するためのエネルギーを使いすぎてしまうことで、やがて限界を迎えてしまいます。
疲弊期
疲弊期は、エネルギー切れの疲労困憊の段階です。ストレスが長期間にわたって続いた結果、生体がそれに耐えられなくなってしまい、段階的に抵抗力が衰えてきます。この時期は、警告反応期の「ショック相」と同じような生体機能の低下や不適応が再びみられるようになります。こうした状態のままストレッサーが弱まらず、疲弊した状態が長期化することによって疾患を引き起こし、最悪の場合死に至ることもあります。
大切なのはストレスのサインに気づいて溜めない事
ストレスを取り除けない状態が長く続くことは疾患の原因となり、死に至ることさえある危険な状態です。最悪の事態を招かないようにするためには、心身や行動のサインに気づき、ストレスを溜めすぎないようにする必要があります。ストレスが蓄積してきているサインには以下の3種類があります。
身体に起こるサイン
ストレスが溜まってきたときに身体に起こる一次的な反応には、食欲不振・体重の減少・不眠・動悸・血圧の上昇などがあげられます。二次的な反応としては頭痛・腹痛・下痢・肩こりなどが起こり、ストレスの蓄積が進行している可能性が高いため対策が必要です。
心に起こるサイン
ストレスの蓄積とともに、心に起こるサインの一次的反応にはイライラ・不安・緊張・無力感・悲しみなどがあげられます。そして二次的反応として、憂うつ感や無気力状態などがあります。
行動面のサイン
ストレスが影響する行動面のサインには、消極的になる、落ち着きがなくなる、人との関わりを避ける、喫煙・飲酒量の増加などがあげられます。
以上のようなストレスのサインに自分で気づくことができれば、心身を休めたりストレスを発散したりなどの対処を行うことができます。ストレスのサインが2週間以上続く場合は、うつ病の疑いがあるため、早めに精神科や心療内科など医療機関の受診を検討しましょう。
まとめ
「ストレスは人生のスパイスである」ともいわれ、人間にとって適度なストレスは良いパフォーマンスを生み出すことにつながります。
しかし、過剰なストレスは心身に悪影響があり、重篤な病に発展するケースも少なくありません。
心身に現れるストレスのサインに注目し、早めの対策を心がけることが必要です。
自身のストレスのサインを見逃さず、心身を休めたりストレスを発散したり、適切に対処しながら健康を維持していきましょう。