主観的幸福感(subjective well-being)とは?

学術領域によって異なりますが、心理学ではウェルビーイングは主観的幸福感とも呼ばれます。
仕事や家庭、人間関係、これまでの人生を振り返ってなど様々な観点がありますが、総じて「自身は幸せであると思えること」が主観的幸福感の意味するところです。

幸福は人間が生きていくうえで欠かせないものであるため、古代ギリシャのアリストテレスの時代から議論が行われてきました。
アリストテレスは「幸福とは人生における至上の目的であり、極端に走ることなくバランスを取って生きていくことが大事である」と説きました。
その後も特に西洋の思想史においては幸福に関して数多くの議論がなされています。

一方、心理学で主観的幸福感についての研究が高まってきたのは、1990年代後半ぐらいです。
それまでの心理学ではうつ病のように病理的なものやネガティブな感情が注目されていたため、幸福感のようにポジティブなものはあまり注目されてきませんでした。

主観的幸福感の国際比較

「幸福感」と一言にいっても、その意味するところは国によって異なります。
例えば、幸福感について多くの国際比較で用いられている尺度のひとつには、「これまで望んだものは手に入れてきた」という項目があります。
これも、幸福のひとつの形です。

しかし日本人を調査対象にした場合、他国と比べて得点が低いという結果になることがほとんどです。
それは、「穏やかに人並みの人生を送ることが幸福だ」と認識している方が日本人には多いためです。
このことから、その文化の人が何を幸福としているかを理解していなければ、その人たちが本当に幸福であるかを知ることができないと言えるでしょう。

文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒
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