アドラー心理学とは

アルフレッド・アドラー(Adler, A.)はオーストリアの精神科医であり、精神分析学の創始者であるフロイト(Freud, S.)の共同研究者です。
ただ、人間が生きていく原動力についての考え方の違いなどから、二人は違う道を進むことになりました。

人間が生きるうえでの原動力として、フロイトは本能部分、特に性的なエネルギーを重視しました。
フロイトによると、患者さんが認めたくない葛藤が無意識に押し込まれ、それが現在の症状に影響しているということです。
当時は性的なものが許されない文化であったため、性的なことは無意識に押し込まれることになります。こういった文化的背景も、無意識を重視するフロイトが性エネルギーを取り上げた理由のひとつと考えられています。

それに対して自身の病弱な子ども時代の経験から、アドラーは「人間は誰もが体や心に何らかの弱さを抱えており、弱さを補償しようとしてより強く、より完全になろうという意志」があると考えました。
そこでフロイトに対抗する形で自身の研究立場をアドラー心理学と名付け、フロイトと決別したのです。
また、アドラー心理学は個人心理学と呼ばれることもあります。

劣等感とその補償

アドラー心理学によると、人間は元々力への意志を持った存在であり、満たされた状態や理想的な状態になろうとします。
しかし、全て満たされた状態である人間はいません。
誰もが何らかの点で劣っていると感じ、劣等感を抱いています。
人間はその劣等感を解消しようとして前向きに生きようとする、というのがアドラー心理学の基本的な考え方です。

そして劣等感を上手く解消できなかった場合は不安、怒り、落ち込みといった複雑に絡み合った感情「劣等コンプレックス」が生じます。
この状態は苦しいため、逃げようとしたり、解消させようとする努力が過剰になって誰かを攻撃したり、孤立したりして心の病を発生させてしまうとアドラーは考えました。

アドラー心理学の理論は日常生活へ活用できる

「個人が自分の人生を自ら切り開く」というアドラー心理学の理論・思想は、個々の目標に向かって努力することで、より充実した人生を送るという考えを支持するものです。
ビジネス書『嫌われる勇気 自己啓発の源流『アドラー』の教え』がベストセラーとなったことからも、ビジネスをはじめ日常生活に役立つと言えます。

文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒
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