失語症とは
失語症とは、脳の特定の部分を損傷した結果として言葉を理解したり、言葉を話したりする能力が障害された状態のことです。言語能力を身に着けた大人に脳卒中や頭部外傷が生じて失語症となることが多いです。損傷した脳の場所によって話す、聞く、読む、書くといった様々な言語機能が損なわれます。
代表的な失語症
代表的な失語症に、ブローカ失語症とウェルニッケ失語症が挙げられます。
ブローカ失語症(別名 運動性失語)
脳のブローカ領域が損傷した結果として生じる失語症のタイプです。このタイプの失語症では、自分の思いや考えを言葉にすることが難しく、しゃべろうとしても言葉がなかなか出てきません。特に言葉の最初の音がどうしても出てこないで苦労することが多くあります。一方で、言葉を理解することには問題はありません。
ウェルニッケ失語症(別名 感覚性失語)
脳のウェルニッケ領域が損傷した結果として生じる失語症のタイプです。このタイプの失語症では、言葉の理解が損なわれます。そのため、相手の話す言葉を理解できないだけではなく、自分の話す言葉も理解できなくなります。滑らかに話せますが、「お茶を飲みたい」と言いたかったのに「コップのきさい」と意味不明な言葉を言ってしまいます。
類似する概念
言語を使うことの障害やコミュニケーションの困難には、以下のようなものもあります。
ディスレクシア(読み書き障害):
ディスレクシアは、文字の読み書きに特化した学習障害です。言葉を話すことや理解することに問題はありません。しかし、文字を正しく読むのに極端に時間がかかったり、よく間違えてしまったりするという困難を示します。学習障害であるため脳の発達に特性があることによる症状であるので、学齢期に困難を示し始めます。
自閉スペクトラム症:
自閉スペクトラム症は、コミュニケーションを取ることが非常に苦手だったり、特定の場所や人、空間に対して強いこだわりを抱いたりするなどの特徴を持つ神経発達症(発達障害)のひとつです。相手の気持ちを理解したり、「夕方までに大体終わらせておいて」のように曖昧な表現を理解したりすることが苦手であることが多いため、コミュニケーションに困難を抱えます。しかしブローカ失語症と異なり、言葉を話すことには問題はありません。また、言葉の使い方や理解が字義通りで文脈は察しにくいものの、言葉の意味も理解できます。
文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒