行動変容とは

行動変容とは、個人の望ましくない行動パターンを望ましいものへと段階的に変えていく過程のことです。
元々は禁煙への介入として医療分野で研究されていましたが、現在では教育や育児、ビジネス行動など幅広く応用されています。

行動変容と似た概念として、悲観的な考え方を変えるのに用いられる認知行動療法があります。
ベースとなる大元の理論は同じものであるため技法など共通する部分は多いですが、行動変容は行動へ、認知行動療法は物の考え方に焦点を当てているという点が違います。

行動変容の元となる理論

行動変容の技術の大元は、観察可能な行動と、その行動の原因となる出来事・刺激を紐づけて考える行動主義の理論です。
特に重要な考え方は、スキナー(Skinner, B. F.)のオペラント条件づけでしょう。

オペラント条件づけの有名な実験は、ネズミにレバー押しという行動を習得させるというものです。
レバーを押したらエサが1粒出てくる箱に、スキナーはネズミを入れました。
あるとき、ネズミの体がたまたまレバーに触れたときにエサが出てきました。
そのような経験を何度も繰り返すと、レバーを押したらエサが出るということをネズミは学びます。
そうして、ネズミはエサをもらおうとしてレバーを押すようになるのです。

レバー押しはネズミが自分から行うことなので、自発的を意味するオペラント(operant)条件づけと呼ばれます。

行動変容を促す技術

行動変容を促す技術は、以下の4つの型がベースとなります。

① 正の強化
望ましい行動をしたらご褒美をもらえる場合を指します。帰宅後すぐに宿題をしたら夕ご飯のデザートが多くなる場合などです。ご褒美をもらおうとして、毎日帰宅後にすぐに宿題をするようになることが期待されます。

② 正の罰
望ましくない行動をした場合に罰を与える場合を指します。弟をいじめたら夕ご飯のデザートを抜きにする場合などです。罰を避けようとして、弟をいじめるなどの望ましくない行動をしなくなることが期待されます。

③ 負の強化
行動したら罰を受けないで済む場合を指します。帰宅後すぐに宿題をしたら怒られないで済む場合などです。罰を避けようとして、帰宅後すぐに宿題をするという望ましい行動を取りやすくなります。

④ 負の罰
望ましくない行動をした場合にご褒美をなくす場合を指します。例えば、子どもがいたずらしているときには無視するなどです。無視されるのを避けようとして、子どもはいたずらをしにくくなります。

文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒
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