傍観者効果とは
傍観者効果とは、困っている人が目の前にいても、自分以外の他者がいると援助行動をしなくなる現象を指します。
傍観者効果の研究は、1964年にニューヨークで起きたある事件が元になっています。深夜に自宅に帰宅していた途中にキティ・ジェノヴィースという女性が暴漢に襲われて殺されました。彼女が殺されるまでの間、目撃者は38人もいましたが、誰も警察に通報すらしませんでした。
この出来事に対して「自分以外の目撃者がいたから通報しなかった」という説を社会心理学者のラタネ(Latané, B.)とダーレー(Darley, J. M.)は主張し・実証しました。
ラタネとダーレーは次のような実験を行いました。
①部屋の中でアンケートをするよう女性職員から求められる
②アンケートに回答している間、アンケートを渡してくれた女性職員は隣の部屋に行った
③しばらくすると、何かが倒れる音と、その女性職員の悲鳴やうめき声が聞こえた
このとき、アンケートに1人で回答していた条件ではほとんどの人が40秒以内に助けに行ったのに対して、アンケートに回答している部屋に他の人がいた条件では2分経過しても半数の人しか助けに行きませんでした。
この結果より、周りに他の人がいると援助行動を起こしにくいことが分かりました。
傍観者効果が生じる要因
傍観者効果が生じる要因として、責任の分散や評価懸念などが挙げられます。責任の分散とは、自分以外の他者がいることで、自分の負う責任が自分ひとりだけのときと比べて軽くなることです。また評価懸念は、自身を悪く評価されることを恐れることです。「もし本当は助けが必要でなかったらどうしよう」、「よいところを見せようとしていると思われないかな」などを気にして、助けに行けなくなってしまいます。
社会的手抜きとの違い
傍観者効果に似た心理学の概念に「社会的手抜き」があります。社会的手抜きとは、集団で同じタスクに取り組むと一人ひとりの努力が低下する、つまり手を抜いてしまうという現象です。社会的手抜きも責任の分散によって生じますが、傍観者効果と異なり緊急事態や援助が必要な場面はその定義に含まれていません。
文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒