防衛的悲観主義とは
防衛的悲観主義は、心理学者ノレム(Norem, J.)が提唱した性格です。
ノレムはストレスを感じる場面でどのように対処するかというテーマで研究を行いました。
そして有効な戦略のひとつとして見出されたのが、防衛的悲観主義です。
この性格は、将来の出来事に対して悪い方向に考え、そのような事態を避けるために徹底した準備を行うというものです。
例えば、期末試験前になると早くから「赤点を取ったらどうしよう」と防衛的悲観主義者は心配します。
そして、赤点を避けるためにしっかりテスト勉強を行います。
防衛的悲観主義者は入念な準備を行うため、実際の試験では良い成績を上げることが多いです。
防衛的悲観主義の3つの特徴
防衛的悲観主義の特徴は、以下の3つです。
①これまで優れた成績・成果を挙げているにもかかわらず、「最悪の結果になったら…」と悪い予想をする
②失敗や最悪の事態を考えてしまうため、不安が強い
③しっかり準備をするため、優れた成績・成果をあげる
①と②までは、不適応に陥りやすい性格と言えるでしょう。
しかし、①②の不安を解消しようとして、防衛的悲観主義者は仕事や学業などにしっかり取り組みます。
防衛的悲観主義者の高い不安は、取り組むためのエネルギーになっているとも言えるのです。
そうして実際に高い成績・成果をあげていることに、防衛的悲観主義の大きな特徴があります。
そのため、提唱者であるノレムも防衛的悲観主義という性格について良いものとして捉えています。
防衛的悲観主義者が成果を出すには
一般的に強すぎる不安は望ましくないため、「大丈夫だよ」と励まして防衛的悲観主義者に違う取り組み方をさせようとすることもあるかもしれません。
しかし、防衛的悲観主義者に自身が満足できる取り組みをさせなかった場合、かえって不安がさらに強くなることが分かっています。
強すぎる不安は視野を狭めたり、心身に悪い症状をもたらしたりするため、パフォーマンスも下がる恐れがあります。
そのため防衛的悲観主義が成果を出すには、本人の取り組み方を尊重する必要があると言えるでしょう。
文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒