うつ病とは
うつ病とは、悲しみや絶望といった気分が落ち込んだ状態が続くという心の病気です。
一時的に落ち込んだりすることは誰にでもありますが、うつ病の場合はひどく落ち込んだ状態の結果、食事をとれなくなったり、どのような出来事に対しても「自分が悪いんだ」と自責的に考えたりします。
つまり、気分の問題を中核として、体や思考をはじめ症状が多岐に渡って見られる疾患と言えるでしょう。
なお冬期うつや産後うつ、非定型うつ、仮面うつ病など「うつ」と名前が付く疾患は多々ありますが、いずれにおいても気分が非常に落ち込んだ状態が中核になります。
代表的なうつ病の症状として、以下があります。
・気分の落ち込み
・疲労感
・睡眠障害
・食欲の変化(食欲がなくなる、ただし過食に走る人もいる)
・集中力の低下
・自己評価の低下(自分を責めるようになる)
・身体症状(体には原因はないが、頭痛や腹痛などが起きる)
うつ病の発症率
「うつ病は心の風邪」と表現されることもあるように、決して珍しい病気ではありません。
一生のうちにうつ病を発症する確率は5.7%と言われています。つまり100人のうち6人程度がうつ病になる可能性があるということです。
さらに性別や年齢で分けると、うつ病の様々な特徴が見えてきます。
性別については女性のほうが男性の2倍ほどうつ病になりやすいです。
これは日本だけではなく世界的にも見られる傾向であり、思春期にかけての女性ホルモンの増加や、妊娠・出産など女性に特有の出来事、男女の社会的格差などもうつ病の発症に影響していると考えられています。
また全ての年齢でうつ病を発症するリスクはありますが、日本で特にうつ病を発症しやすいのは若年層と中高年層であると言われています。
そして、年齢層によってよく見られる症状が違います。
若年者では過眠や過食が多いですが、中高年層では、言葉や行動が普段と比べてゆっくりになったり、反対にじっとしていられないという症状が多く生じます。
代表的なうつ病の治療法
うつ病には何よりもまず十分に休養を取ることが大切です。ストレスを感じ、うつの原因になった職場などから距離を置き、ゆっくりと心身を休めることが必要です。それだけで十分な効果がみられない場合には、主治医の判断のもと、治療を導入していきます。
代表的なうつ病の治療方法は大きく二つあります。
一つ目は抗うつ薬を使った薬物療法です。抗うつ薬には複数の種類がありますが、近年ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)と呼ばれる抗うつ薬が、副作用が比較的少ないものとして使われることが増えています。
二つ目は心理学的な手法により症状の改善を支援する心理療法です。
うつ病の患者さんは「何事においても自分は無力なんだ」という偏った思考パターンが頭から離れない場合が多いと言われています。この思考パターンの偏りやそこに起因する行動を修正することでうつ症状改善の可能性が高まります。認知行動療法は、そこに焦点をあてた心理療法として注目されています。
文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒