フロイト心理学の基礎概念     

フロイト心理学とは、オーストリアの精神科医ジークムント・フロイト(Freud, S.)によって20世紀はじめ頃に提唱された心理学の派閥のひとつです。
なおフロイト心理学という言葉は俗称であり、学術的に正しい名前は精神分析学です。

フロイト心理学の一番の功績と言えば、無意識の発見でしょう。
身体には問題がないにも関わらず、体の一部が動かなくなったり、声が出なくなったりする病気「ヒステリー」についてフロイトは研究・治療を行いました。
その中で、催眠療法を受けた患者さんがそれまでは話せなかったことを言葉にすると、症状がなくなるという出来事に、フロイトは衝撃を受けました。
この経験から、普段は全く自覚されない「無意識」が心にはあり、それが私たちに強い影響を及ぼしているとフロイトは感じたのです。

無意識の葛藤を解消するフロイトの心理療法

フロイトによると、心の構造は次のようになっています。

水面から出ている「意識」部分が私たちの普段自覚できている心です。
その下に頑張れば意識できる記憶などが入っている「前意識」部分があり、さらにその下に普段は全く意識されない「無意識」部分があります。

例えば、「幼い頃、親に甘えたかったけど弟や妹がいたから我慢していた」いった抑え込まれた葛藤が無意識の中にあります。
この無意識の葛藤が現在の自分に影響してくるので、無意識の葛藤を解消することで症状が治るというのがフロイトの心理療法です。

無意識を思い起こさせる方法の一つは、自由連想法と呼ばれるものです。
これは、心に思い浮かんだことについて何でも話してくださいと話を聞いていく治療技法です。
ただ、それでもどうしても思い出したくはないことについては出来事を話せなくなるといった抵抗が患者さんには見られます。
そこで、無意識の願望や恐れが反映されるということから夢の内容について患者さんに話してもらい、夢の内容について自由連想を行い、葛藤を開放するという夢分析も行っています。

現代におけるフロイト心理学

フロイト心理学からの枝分かれや、批判の中から生まれた学派、心理療法は多岐に渡ります。
そのため、現代の心理学や精神医学、心理療法にも大きな影響を与えていると言えるでしょう。

なお、フロイトが使っていた無意識の概念や夢分析の手法は、現在のカウンセリング・心理療法でも使われています。
そのためフロイト心理学自体も過去の学派・治療派閥というわけではなく、現在も用いられている療法のひとつと言えます。

文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒
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