集団による意思決定とは?

集団による意思決定とは、複数人で話し合いを行い、最終的な結論や行動方針を定めるプロセスを指します。

一人でおこなう「個人の意思決定」とは異なり複数の視点や情報を元に判断が行われるため、集団による意思決定によって、より創造的で多面的な解決策が導き出される可能性があります。
また、決定に多くのメンバーが関わるため、その決定への納得度が高まり、実行段階での協力も得やすくなります。

ただし、集団による意思決定にはリスクも伴います。

結論を急ぐあまり、多様な視点のアイデアを無視したり、批判的な意見が言いにくくなった結果、十分に議論せず結論を下してしまうことがあります。
また、多人数が参加する話し合いでは「誰かが話すだろう」という心理が働き、一部のメンバーが積極的に参加しなくなる現象が見られることもあります。

集団による意思決定を扱った研究

集団による意思決定を扱った研究として、心理学者アッシュの同調実験は有名なもののひとつです。
彼の研究では、明らかに誤った回答でも大多数のメンバーがそれを正しいものだと主張していれば、本当は正しくないと分かっていても自分も同じように主張してしまう傾向があると示されました。

また、ラタネの研究からはどういった時に集団内の発言に偏りが見られるかを調べました。
その結果、近しい人物であったり、その意思決定のテーマの専門的な知識を持っていたりすると、他者の意見に影響を及ぼしやすいことや、その影響を与える人の数が多いと、集団内の発言力に偏りが見られやすいと言われています。

実務へのヒント:より良い集団意思決定を促すには

より良い意思決定を行えるようにするには、どんな立場の人でも自由に発言できる環境を整えることが大切です。
特に、話し合いの最初の段階では良し悪しは評価せず、活発に色々な意見を出し合うと、創造性の高い意思決定を行えるようになるでしょう。
ファシリテーターやタイムキーパーなどの役割を作ることで、発言の偏りを防ぎ、全員が意見を主張できるような環境を整えることができます。

ときには上下関係からどうしても意見を言いにくいこともあります。こういった場合は匿名投票を導入することで忖度を避けることができます。

文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒
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