グループダイナミクスとは

グループダイナミクスとは、個人と集団の相互作用を研究する社会心理学の一分野です。
社会心理学の父と呼ばれるドイツ出身の心理学者クルト・レヴィン(Lewin, K.)によって提唱されました。

集団を構成する個人の行動や考えが他のメンバーや職場環境全体に影響を及ぼすと同時に、組織の行動や考えも個人に影響を及ぼすという考えが、グループダイナミクスのベースとなります。
例えば、集団内でのコミュニケーションやリーダーシップ、目標に対する一体感、意思決定などに関する研究がこの分野では行われています。

グループダイナミクスの一例:リーダーシップ

個人が職場環境に与える影響と、職場環境が個人に与える影響は互いに連動しているため、この力動学的な関係を理解することが集団現象を理解するうえで欠かせません。
その一例としてリーダーシップを説明します。

リーダーシップについての研究は、古くは「リーダーに必要な特徴」や「優れたリーダーが取っている行動」という観点から行われてきました。
しかしリーダーだけではなく、リーダーについていくメンバーすなわちフォロワーの観点も考えなければならないことがその後の研究から分かりました。

「リーダーはメンバーをマネジメントして集団としての成果を挙げる」といったようにフォロワーは何らかのリーダー像を持っています。
このリーダー像がリーダーシップの強さ、ひいてはリーダーの評価にかかわってきます。
しかし、もしフォロワーが「リーダーは集団の成績に影響しない」「集団業績は運によって大きく左右される」などと考えていれば、集団が良い業績を上げたとしてもリーダーの評価にはつながりません。
そもそも、リーダーシップをフォロワーは感じないでしょう。
つまりリーダーシップが発揮されるには、リーダーが集団に及ぼす影響だけではなく、フォロワー集団がリーダーに及ぼす影響の双方を考える必要があります。

リーダーシップに関する研究は現在、さまざまなパターンでのリーダーシップの取り方を具体的に考えるコンセプト理論などに派生しています。

日常生活と職場におけるグループダイナミクスの活用

グループダイナミクスの概念は、職場を含め日常生活において幅広く有効です。チーム活動やグループ作業が求められる状況でグループダイナミクスの原則を活用することにより、より良いコミュニケーションや協調的な行動が促されるでしょう。

またグループダイナミクスの概念は、集団から個人が受ける影響と、個人が集団に及ぼす影響を双方向から理解できることにつながります。その結果、個々人の行動やチーム全体の動向をより良くマネジメントできるようになるでしょう。

引用文献
Lewin, K. (1947). Frontiers in group dynamics: Concept,method and reality in social science; social equilibria and social change. Human Relations, 1, 5–41.

文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒
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