ストレスチェックとは?実施する目的や義務化された背景、方法について紹介します

人事の基礎知識

企業が対象の従業員に実施するストレスチェックをご存知でしょうか?実際に会社で受けたことがある方も多いかと思いますが、なぜ実施する必要があるのか。受けるメリットはあるのかなど、疑問に感じたことがある人もいるのではないでしょうか。ストレスチェックの目的や背景を理解すると、より意味のあるストレスチェックの結果を知ることができます。そこで今回はストレスチェックについて、実施する目的や義務化された背景、方法について紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

「ストレスチェック」とは

ストレスチェックとは、職場で働いている従業員が自身のストレス度合いを知ることができる検査のことです。質問票に沿って自分の感情を記入することで、自分のストレスの原因となりえる要素やストレスがどう身体に現れているか理解し、結果に応じてセルフケアや医師の面接指導を受けることができます。会社としてはストレスチェックを実施することで、働く従業員のメンタルの状況を把握し、不調を未然に防いだり、労働環境を改善する効果が期待できます。

ストレスチェックはなぜ必要なのか

では、なぜ企業がストレスチェックを行う必要があるのでしょうか。目的2つあり、従業員のメンタル不調にいち早く気付き未然に防ぐこと。そして、必要に応じて職場環境の改善を行うことが挙げられます。

ストレスチェックがない場合、従業員のメンタル不調に気付くのは簡単ではありません。例えば、業務に関するストレスや不安を把握するためにかける労力や、どんな要因が心理的な負荷になっているか知るための手段はなかなか見つけにくいです。ストレスは本人が知らず知らずのうちに溜まっていくことが多く、負荷がかかっていることにも気付きにくいものです。ストレスチェックを実施することで、自分のストレス度合いを可視化し認識することができるのはメリットと言えるでしょう。さらに、従業員が感じるストレスの要因を知ることで、職場環境の改善という形で会社も動くことができます。ストレスチェックを行うことで潜在的なストレスや根本的な要因を見つけやすくなることが期待できます。

実施者と対象者

では、具体的にストレスチェックを実施する上で重要となる実施者と対象者について詳しく見ていきましょう。

ストレスチェック実施者

ストレスチェックの実施者になれるのは、医師や保健師、精神保健福祉士をはじめ「厚生労働大臣の定める研修を受けた」人です。注意点として、該当の資格を持っていたとしても人事権を持つ人は実施者になることができません。

ストレスチェック対象者

ストレスチェックの対象者は厚生労働省が定める「事業場が常時使用する労働者」となります。そのため、役員や社長は対象外です。具体的な検査対象者の要件としては、「期間の定めのない労働契約により使用される者であること」「その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること」などがあります。

契約社員やパート、アルバイト、派遣社員などは、条件を満たしている場合実施の対象となります。そのため同じ雇用形態であっても、条件に満たない労働者はストレスチェックの対象には含まれません。ただし、ストレスチェックを実施した方がより安定した職場環境を維持できる可能性があるため、必要に応じてストレスチェックを実施するのが望ましいと考えられます。

ストレスチェック義務化の背景

ストレスチェックは、2015年12月労働安全衛生法の改正により、実施が義務化されました。ストレスチェックが義務化された背景として、仕事や職業生活に関する強いストレスを感じる人の割合が増加しており、精神障害による労働災害の認定件数が増加傾向にあることなどが挙げられます。先でも紹介したように従業員のメンタルヘルス不調にいち早く気付き、必要に応じて職場環境の改善し、離職や精神疾患の発症を未然に防ぎたいと考える会社は多いです。常に従業員のメンタル状況を把握する試みの一環がストレスチェックが義務化された一番の目的といえます。

義務の対象企業と内容

厚生労働省が定めるストレスチェックが義務化されている対象企業は「常時50人以上の従業員を使用する事業場」です。50人に満たない事業場では義務ではなく、”努力義務”とされていますが、ストレスチェックを実施した方が望ましいといえます。

気になるストレスチェックの実施内容ですが、ストレスチェックには種類がありますが、時間をかけずに手軽に実施できる検査として、厚生労働省が提供する「5分でできる職場のセルフストレスチェック」が代表的です。頻度は1年以内に1回とされているものの、衛生委員会で討議した上で実施するタイミングや頻度を決定するのがいいでしょう。ストレスチェックの結果をうけて、10人以上のグループで集団分析し、ストレス傾向を探ったり職場環境の改善をはかることが努力義務とされています。

未実施の場合罰則はある?

では、ストレスチェックを実施していないと罰則などはあるのでしょうか。義務化されている対象企業は「常時50人以上の従業員を使用する事業」となっており、ストレスチェックの結果を労働基準監督署へ報告する必要があります。例えばストレスチェックを実施していなかったり、事実とは違う報告をした場合には、50万円以下の罰金を課される可能性があります。労働基準監督署への提出は紙媒体のほか、オンラインでも行えるため、ストレスチェックを実施できたら、速やかかつ正直に報告するようにしましょう。

ストレスチェック実施の流れ

ここではストレスチェックを実施する際の流れについて、簡単に紹介します。

①事前準備

ストレスチェックを実施する場合には、必ず事前準備を行います。ストレスチェックで実施する内容や方針を明確にすればするほど、今後の改善に活かしていくことが期待できます。事前準備として決めておきたい内容には、実施者を誰に依頼し、実施する期間はいつが適切なのか。質問内容や対象者のストレス度の評価方法、その後の結果をどうデータ化しどのように管理・活用するのかなど、決めなければいけないことは山ほどあります。従業員の時間を割いてストレスチェックを実施するため、しっかりと話し合いの場を設け、ストレスチェックの精度を上げていく必要があります。

②対象者へ実施通知を行う

ストレスチェックについて内容が決まったら、対象者へ実施に関する通知を行います。対象者は決められた期間内に、ストレスチェックを行います。

③対象者へ結果を通知する

実施者は検査結果を確認し、医師の面接指導や過度なストレスを抱えている者を判断します。ストレスチェックの結果については、随時実施者から対象者へ通知していきます。

ちなみに、事業者は労働者に対して検査結果の開示を強制してはいけないことになっているため、事業者が検査結果を知りたい場合には、受検者本人の同意を得る必要があります。

④必要に応じて面接指導を行う

医師の面接指導や過度なストレスを抱えている者と判断された対象者に、医師の面接指導を実施します。面接指導に関しては、あくまで任意の参加となりますが出来る限り参加してもらった方が望ましいです。面接指導の内容をもとに、必要に応じて労働時間の短縮を検討したり、残業の制限を導入するなど対策を行います。

ストレスチェックに意味を持たせるためにできる事

厚生労働省がストレスチェックの実施状況を調査したところ、義務化された対象企業であっても実際に受検した従業員は8割程度に留まっていました。対象企業には実施義務が課せられているものの、対象者には受検義務がないことが要因と考えられます。対象者は「ストレスチェックに意味はない」と考えている傾向が強く、対象企業が従業員に強制力を持たせられないことも理由といえます。ストレスチェックを受けない対象者が多いと、集計・分析結果の信憑性も低下するため、ストレスチェックの意味をなくしてしまいます。

さらに、ストレスチェックの結果を受けて「高ストレス者」として判断されても医師による面接指導を受ける従業員が非常に少ないのも現状です。「自分のストレスを軽視し、メンタル不調について理解できていない」対象者が多いことが原因と考えられます。ストレスチェックを全従業員に受けさせて意味を持たせるためにも、重要性やストレスチェックの結果をどのように生かしていくのか、対象者に理解してもらうことが大切です。例えば改善計画を従業員に伝えたり、職場環境の改善に向けた具体的な取り組みを伝えるのも効果的といえるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回はストレスチェックについて、実施する目的や義務化された背景、方法について紹介してきました。近年、仕事や職業生活に関する強いストレスを感じる人の割合が増加しており、精神障害による労働災害の認定件数が増加傾向にあります。ストレスチェックの対象企業は従業員のメンタル不調にいち早く気付き、必要に応じて職場環境を改善し、離職や精神疾患の発症を未然に防ぐ必要があります。なかなか全従業員にストレスチェックを実施させるのが難しい現状ではありますが、意味を持たせるためにも、重要性やストレスチェックの結果をどのように生かしていくのか、対象者に理解してもらうことが大切といえるでしょう。

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