アクセプタンス&コミットメント・セラピーとは?困難や苦しみとどう向き合うか

人事の基礎知識

アクセプタンス&コミットメント・セラピーは、困難な状況においても現状を受け入れ、自分の価値観に基づいた行動をとるという方法です。今回は、ACTの行動原則や具体的な方法についてお伝えしていきます。

アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)とは

アクセプタンス&コミットメント・セラピー通称ACTとは心理療法の一つで、現状を受け入れた中で、自分自身が大切にしたい価値を生み出すために行動していくことを目的としています。

人生において困難や苦しみは多かれ少なかれ必ずやってくるでしょう。そういったマイナスのことを無理になくそうとするのではなく、そういった事実やその時に抱く感情をありのままに受け入れた中で心理的柔軟性を養い、どんな状況においても前を向いて歩んでいくことを実現しようとするものです。

心理的柔軟性を生み出す6つの行動原則

続いては、ACTにおいて重要な6つの行動原則をご紹介していきましょう。

1,アクセプタンス

不安や困難に対する自分の感情や思考をあるがままに受け入れて体験することです。無理に感情を抑え込んだりかばうということをやめます。

2,脱フュージョン

フュージョンとは融合を意味する言葉です。思考と現実を融合してしまうことで影響を受けてしまうことから逃れることを脱フュージョンと示します。

自分の思考と距離をとることで客観的に観察し、そうすることで、ネガティブな思考から距離を置くことができ思考から受ける強い衝撃を緩和することに繋がります。

3,今現在を見る

過去の体験を思い返して不安に駆られたり、将来に対する不安を抱いたりするのではなく、あくまでも視点は今に定めて集中するようにします。

過去や未来に対する志向にとらわれて心ここにあらずな状態になってしまうと、現状に対する正しい判断や対処が難しくなってしまう可能性があります。

4,概念としての自己

自分が何を考えているのか、どのような行動をとっているのかを客観的に見ることで概念としての自己を捉えることができます。

そうすることで、思考にしばられることなく、気づきをもって自己と付き合っていくことが可能になります。

逆に概念として自己をとらえることができないままだと、過去や未来に対する思考にとらわれて現状を乗り越える行動を摂ることが難しくなってしまいます。

5,価値

自分自身がどのような価値観や信念を大切にするのかを明確にして、それに従って行動していきます。価値が曖昧なままであると、それに付随した行動に一貫性がなくぶれたものとなってしまうだけでなく、いざ価値観を定めようと思ったときでもそもそも価値観に触れられなくなってしまう可能性も出てきます。

行動を始める前に、まずは価値を明確にしておくことで目的や目標に向かってまっすぐに進んでいくことができます。

6,コミットされた行為

明確にされた価値観に基づき形成された目標に向かって行動することです。価値観を定めただけでは結果にはつながりません。

目標を達成するためにどのような行動をとるべきかを明確にして、計画に基づき実際に行動することが求められます。

目標は、短期的なものから長期的なものまでさまざまに定めることが可能です。

結論から言うとどちらの形でも構いませんが、行動を進めていく中で、自分がやりやすい、自分に合った形で目標を定めていくことが良いと言えるでしょう。

ACTはどこで活用されているのか

ACTは一つ目に、うつ病や不安障害、強迫性障害といったさまざまな精神疾患において専門的療法として活用されています。

医療領域での活用に関しては、症状が発症した際の苦痛軽減を目的としたものですが、そもそもの症状緩和にも役立つものとなっています。

二つ目に、一般の人がストレスを感じるような場面に直面した際にも活用することができます。仕事をするうえでACTの考え方を取り入れた場合に、取り入れる前と比べてイキイキとした働き方ができるようになったという実例もあります。

三つ目に、教育における活用です。カウンセリングだけでなく、その前段階の自己理解やセルフケアといった分野においても導入することで教育現場の充実や個々人の理解力の向上につなげています。

ACTの具体的方法

次に、ACTを実際に活用する方法についてご紹介していきましょう。

1,アクセプタンス

アクセプタンス、いわゆる自己受容はありのままの自分を肯定し、受け入れるというものです。

過去や将来にとらわれていると現状や置かれている自分自身を受け入れることが難しくなってしまいます。

そのため、マインドフルネス瞑想をおこない現状に意識を集中させることで心を落ち着かせながら今を受け入れていくという方法で進めていきます。

マインドフルネスとは、今ここに意識を集中させてありのままを受け入れる状態のことです。それを、穏やかな気持ちで心を無にして意識を呼吸に集中させた瞑想と掛け合わせることで、上手にACTを取り入れていくことができるようになるのです。

また、マインドフルネス瞑想とあわせて実際に体験したり経験していくことも重要です。

視野を広げたり様々な感情や思考を形成していくことで、困難や苦しみが起こった場合にも柔軟な対応がとれるようになっていくのです。

2,コミットメント

コミットメントとは、目標に向かって行動することです。コミットメントを促進するために、自分が大切にしたい価値観について深く考えたり、その価値観にどのような意味があるのかを明確にしていきます。

また、価値観が定められたらそれを達成するための行動目標を策定していきます。

そうすることで、自分にとって価値のある行動をとることに繋がり、目標に向かって進んでいくことができるようになっていくのです。

ACTと認知行動療法(CBT)の違い

ACTは認知行動療法(CBT)の一種という位置づけになります。どちらも、心理療法の中で不安、うつ、摂食障害、怒りの問題、薬物乱用、恐怖症などを解決に導く方法として良く知られているものですが、困難や苦しみに対するアプローチの仕方に大きな違いがあります。

はじめに、ACTの場合困難や苦しみが生じた際のネガティブな思考や感情、行動などを受け入れるという行動をとります。

生きていると、良いことだけでなく悪いことももちろんあります。悪いことを排除したり忘れようとするのではなく、ありのままに受け入れて心理的柔軟性を育成していくという方法です。

一方、CBTは困難や苦しみに直面した際に起こるネガティブな感情や行動を特定し、変化させるというものです。

したがって、否定的な思考から肯定的な思考に変えていくための方法になります。

CBTはACTに比べて時間をかけて長期的な視点で進めていくことが多くなります。

どちらも同じ心理療法ではありますが、アプローチの方法は真逆と言っても過言ではないでしょう。

まとめ

以上、アクセプタンス&コミットメント・セラピーについてその定義や効果をもたらすための行動原則などについてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?

ACT同様に良く用いられているCBTとの比較では、全く別のアプローチで進めていくことに驚かれた方もいるのではないでしょうか?

ACTはありのままの現状を受け入れて、前向きに目標に向かっていくことで心理的柔軟性を養っていくという方法です。

したがって、その時は困難や苦しみだと感じたとしても、さまざまな経験を積んでいくことが、将来的に自己成長に繋がっていくものだといえます。

今回お伝えしたことが、ACTの正しい理解に繋がれば幸いです。

関連記事

特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP