労働者が働きやすい環境を整備することは、優秀な人材の確保や業務の効率化、また企業イメージの向上など企業にとってもプラスに作用する効果のあるものです。
今回は家庭の満足度やワークライフバランスに注目し、労働者にとって働きやすい環境とはどのようなものなのかに注目していきたいと思います。
家庭の満足度が上がると仕事の質は向上するのか
家庭の満足度とは、多くの企業や団体で取り組んでいるストレスチェックに挙げられる項目の一つであり、子育てや育児、パートナーとの時間や自分だけの時間などについてどれくらい満足しているかというものです。
仕事の質とは、効率的に業務を遂行することができるということや、ノルマの達成などしっかり結果を残すことができるかどうかによって決まります。
一般的に、家庭が円満であると仕事でも力を発揮することができるというイメージをお持ちの方も多いでしょう。逆に家庭がうまくいっていないと、仕事においてもモチベーションを維持できなかったり家庭の不安や悩みを仕事にまで持ち込んでしまったりして、ミスをしてしまうなんて言うことも起こり得ます。
したがって、家庭の満足度が仕事の質の向上に影響を与えるということは多かれ少なかれあることだといえます。
ワークライフバランスとは
ワークライフバランスとは、仕事と生活の調和を意味する言葉です。
仕事においてはやりがいや充実感を感じながら取り組むことができ、家庭においても自分が求める充実した時間や家庭を大切にする時間をしっかりと持つことができるということを社会全体として目指していくというものです。
特にワークライフバランスは、従業員が介護や育児などで家庭の比重が高い場合において、企業側が積極的に多様な働き方の提案をおこなうことや、社員の相談に乗ってアドバイスするなど、寄り添うことが重要になってくると言えるでしょう。
企業のさまざまな取り組み
労働者のワークライフバランスを実現させるために、具体的に企業ではどのような取り組みを行っているのでしょうか?
1,時短勤務
通常の労働時間を短縮した働き方で、主に子育てや介護をしている人たちでフルタイムで働くことが難しい状況に置かれている人たちをサポートするために育児・介護休業法で定められている制度です。
子育てという点に注目して制度を見てみると、制度利用には3歳未満の子供を養育していることや1日の所定労働時間が6時間以下でないことなどの条件がありますが、それに該当すれば短時間での勤務が可能となります。時短勤務により、保育園に迎えに行く時間や夕食の準備などにおいて少しでも余裕を持って取り組めるようになり、家庭での時間を有効に使うことができるようになるでしょう。
2,フレックス勤務
フレックス勤務とは、決められた労働時間の範囲内で、始業及び終業を労働者が自由に決められるという制度です。各々のライフスタイルに合わせて時間を決められることから、家庭を優先させて仕事に取り組むことができます。
ただし、一般的なフレックス勤務では1日の労働時間の中で必ず勤務しなくてはならない「コアタイム」という時間帯を設けていることが多くなっています。その場合には、必ずその時間帯を含んだ時間設定が必要となります。また、1週間の労働時間は40時間以内(特例措置を受けた会社は44時間以内)と決められていますので、完全に自由に時間を組めるということではなく、一定の条件のもとで決めるものであると理解しておきましょう。
3,在宅勤務
オフィスに出社せずに、自宅で仕事をするという勤務形態のことです。企業側にとっては通勤費やオフィス維持費の削減にもつながりますし、多様な働き方を導入しているということで企業イメージの向上にもつながる取り組みだといえます。さらに、多様な働き方の導入は、優秀な人材の確保や雇用継続にもつながります。
労働者にとっては、働き方の選択肢が増えることで、仕事をやめずに続けることができるということや、通勤時間の削減、また隙間時間をうまく使って仕事に取り組むことができるなどのメリットがあり、企業、労働者双方にとって大きなメリットのある働き方だといえます。
プライベートと仕事の充実の関連性が強いのはどの世代?
続いて、若い世代にポイントを絞ってプライベートと仕事の関連性について見ていきましょう。
1,10代~20代
10代・20代が最も家庭の満足度と仕事の質の向上の関連性が強いと考えられています。まだ、独身の人も多い年代ということもあり、プライベートの時間を自分の時間にあてられることが多く、自分の趣味ややりたいことをプライベートで存分に楽しむことができる人は、その活力を仕事にも生かすことができているのではないでしょうか?
特に若い世代では、仕事とプライベートをしっかり分けて、オンオフにメリハリをつけて働くことを求める人が多くなっています。
そのため、会社では休みの取りやすい環境や長時間労働の是正など働きやすい職場環境を整備することで、自ずと労働者が業務効率を上げて働くことができ、またプライベートの時間もしっかりと確保しながら充実させることが期待できるでしょう。
2,20代~30代
こちらの世代は、結婚、出産を経て子育て中という方も増えてくる頃です。
特に小さなお子さんを育てている場合には、家庭の時間が特に必要となる時期だと言えるでしょう。そのため、ワークライフバランスが特に注目される世代だといえます。
育休が取りやすい環境であるか、また時短勤務やリモートワークで対応できるかどうかなどは子育て世代にとって大変重要なポイントになります。
仕事を続けたいと思っていても、なかなか家庭との両立が難しくて辞めてしまうという人も多い中で、企業としては優秀な人材の確保や一人一人が働きやすい職場環境を今一度見直し、働く人のワークライフバランスを保つための取り組みが求められています。
現在の方が20年前より家庭の満足度が低い?
お伝えしてきたように、ワークライフバランスの実現のために、企業がさまざまな取り組みを行っているにもかかわらず、家庭の満足度が20年前に比べて低くなってきているという実態があります。
特に、男性の30代、40代、50代では家庭生活の「充実感がない」が「充実感がある」の値を上回っており、何らかの不満を抱えている人が多くなっているという結果となっています。
このことから、20年前と比較すると総労働時間は減少傾向にあり本来であればその分生活の充実度が上がると想定されるものであったものの、結果として労働時間の減少が家庭の充実度に直結するものではないということが示されたということだと言えるでしょう。
実際にさまざまな制度ができても、それを実際に利用できるか、また自分の生活実態に即したものかどうかなどが重要だといえます。したがって、今後はワークライフバランスを実現させるためにどのように制度を活用したり、見直していくべきなのかを考えていくことが労働者の家庭満足度のアップにもつながっていくと言えるでしょう。
まとめ
以上、家庭の満足度が仕事の質に与える影響及び世代による違いについて解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
ワークライフバランスを実現させて仕事と家庭を両立することは、企業にとっては人材確保をする上で重要なポイントになるものだと言えるでしょう。
社員にとって働きやすい環境とはどのようなものかを今一度精査したうえで、その実現に取り組んでいくことが、企業に求められることだといえます。