ストレスコーピング理論とは?ストレスの要因や対処方法の種類についても詳しく解説

人事の基礎知識

ストレスと向き合う方法として、近年注目されているのがストレスコーピング理論です。
心理学者が提唱したこの理論は、ストレスを悪者として排除するのではなく、うまく対処して付き合っていく方法としてさまざまな企業から注目されています。
この記事ではストレスの要因や対処法、ストレスコーピング理論についてくわしく解説します。

ストレスコーピングとは

ストレスコーピングとは、ストレスに対処することで心身への負担を軽減する方法です。心理的ストレス研究の権威であるラザルスが提唱し、現在ではさまざまな企業に取り入れられています。職場でのストレス対策として注目されているストレスコーピングについて解説します。

防衛機制との違い

厚生労働省の健康情報サイトによると、ストレスコーピングとは「ストレスのもとにうまく対処しようとすること」と書かれています。
似たような意味の言葉に「防衛機制」がありますが、こちらは本能的に働く防衛反応のことをいいます。ストレスコーピングとの違いは、無意識な反応であるということです。ストレスコーピングは意識的な行動であるため、防衛機制とは違う分類になります。

ストレスコーピングの歴史

ストレスコーピングという言葉は、ラザルスという心理学者が提唱したメンタルヘルス用語です。その後、企業での取り組みなどで広まり、現在は職場でのストレス対策として注目されています。
ラザルスは日常の小さな苛立ちを「デイリーハッスル」と名付け、人間がデイリーハッスルにどう反応しているかを調査しました。
そして、ラザルスが行った研究によって、人間のストレスに対する認知評価はストレッサーに対しての認知(一次的認知評価)とストレス反応についての認知(二次的認知評価)の2段階で行われていることが明らかになったのです。これがストレスコーピングの原点となっています。

なぜストレスを抱えてしまうのか

現代はストレス社会と言われるほど、ストレスを抱えてしまう原因が多く存在しています。ここではストレスを抱える要因を大きく4種類に分けて解説します。

環境的要因

環境的要因は、職場環境や通勤環境などの状態がストレスの原因であることを表しています。
環境的要因はさらに「物理的」「科学的」「生物的」に分けられ、具体的には以下のような環境がストレスになる可能性があります。

要因具体例
物理的要因冷暖房による温度や湿度、長距離通勤など
科学的要因たばこの煙や騒音、工場の粉塵など
生物的要因花粉や細菌など

身体的要因

身体的要因とは、病気や体調不良などが原因でストレスを抱えてしまう場合です。

具体的には腰痛や腹痛などの痛みをはじめ、睡眠不足などもあげられます。この状態が続くと、肉体的・精神的にもストレスがかかります。身体的要因によるストレスを避けるためには、日頃から生活リズムを意識して整えていくことが重要です。

3.心理的要因

怒り・不安・焦り・緊張・落ち込みなどの感情が、ストレスを抱える原因になる場合もあります。心理的な負担が増えると動悸・発作・息苦しさ・筋肉の緊張などを伴うこともあり、その結果うつや不眠症などの病気になる可能性もあります。

心理的要因によるストレスから回復するためには、信頼できる人に話を聞いてもらったり、ノートなどにアウトプットしたりといった方法で、気持ちを整理すると良いでしょう。

4.社会的要因

ストレスは、人間関係トラブルなどの社会的な要素からも生まれます。

職場での評価・ノルマ・転職といった仕事面での要素はもちろん、恋愛や離婚といったプライベートな環境の変化からも大きなストレスを受けます。

ストレスを抱えすぎるとどうなる?

適度なストレスは、行動を起こす励みにもなり、人生を豊かにしてくれる良い面もあります。しかし過剰なストレスが蓄積すれば、肉体だけでなく精神的な負担が増加し、心身の健康を害する要因となるため注意が必要です。

適度なストレスは必要

悪者扱いを受けることの多いストレスですが、適度なストレスは交感神経系を目覚めさせ、判断力や行動力を高める効果があります。ストレスがきっかけで向上心が生まれ、より良い行動につながる場合も少なくありません。
ヤーキーズ・ドットソンの法則では、「適度なストレスがかかっている時に、人は最適なパフォーマンスを発揮できる」といわれています。快適で充実した生活がおくれるのは、ストレスのおかげともいえるでしょう。

ストレスを抱えすぎるとどうなる?

ストレスを抱えすぎると、心身へのさまざまな悪影響があります。症状には個人差がありますが、一般的な症状は以下の通りです。

初期症状胃がもたれる、頭が重い、目が疲れる、肩こりがある、背中や腰が痛い、朝すっきりと起きられない、立ちくらみがある、夢をよく見る、風邪が長引く、微熱が続く、顔や体に湿疹が頻繁にみられる
重度の症状疲れやすい、抑うつ気分が続いている、食欲不振や過食・拒食、興味や喜びを感じられない、眠れないまたは寝すぎてしまう、考えて決断できない、いつも罪悪感を覚える、集中力がない、気持ちが焦りイライラしやすい、自殺を考えることがある

ストレスコーピングの種類

ストレスコーピングとは、ストレスに対処してうまく付き合っていくための方法です。
大きく分けて、問題焦点型コーピング・社会的支援探索型コーピング・情動焦点型コーピング・認知的再評価型コーピング・気晴らし型コーピングの5種類が存在します。

問題焦点型コーピング

問題焦点型コーピングとは、問題そのものを根本的に解決し、ストレスを発生させないように対処することです。人間関係や環境に働きかけ、問題自体を変えることでストレスを排除していきます。

社会的支援探索型コーピング

社会的支援探索型コーピングとは、周囲に助けを求めてストレスに対処することです。職場の悩みを家族や友人に相談したり、信頼できる上司や同僚に協力してもらったりすることで、ストレスとなる問題を解決します。人に相談して解決することは「接近型コーピング」ともいい、外部の相談サービスや支援を利用することも含まれます。

情動焦点型コーピング

情動焦点型コーピングとは、感情にアプローチする方法です。自分の感情をコントロールすることでストレスを解消します。具体的には、ネガティブなことを考えず、趣味を楽しんで早めにストレス発散するなどの対応です。感情をコントロールできるまでには時間がかかるケースが多いため、効果的な対処方法を見つけるまでは忍耐力が必要となるでしょう。

認知的再評価型コーピング

認知的再評価型コーピングとは、情動焦点型コーピングのひとつです。
具体的には「成長のため」あるいは「期待されている」といったように考え、ポジティブシンキングでストレスを軽減します。

気晴らし型コーピング

気晴らし型コーピングとは、ストレスを感じてしまった後に行う回避型コーピングです。

ストレス解消型コーピングとも呼ばれるこの方法ですが、趣味を楽しんで気分転換をするなど一般的にストレス発散と呼ばれるのは、気晴らし型コーピングに該当します。

具体的な取り組み方法

ストレスコーピング理論に取り組む方法として、一番分かりやすいのは「健康な生活をすること」です。
まずは起床時間を中心に規則正しい生活を送り、食生活を見直し、軽い運動を習慣化しましょう。また、入浴・読書・自然と触れ合うなど、リラックスできる時間を持つことで心身ともにバランスの良い生活を送れます。
また、一度に大きく生活を変えようとすると、それもまた大きなストレスになってしまう可能性があります。できる範囲から少しずつ取り組んでいくのがおすすめです。

まとめ

ストレスコーピング理論とは、心理学者が提唱した理論で、近年では職場でのストレス対策として注目されています。ストレスコーピングには大きく分けて5種類あります。
問題焦点型コーピング・社会的支援探索型コーピング・情動焦点型コーピング・認知的再評価型コーピング・気晴らし型コーピングから、自分に合ったものを選択しましょう。適度なストレスは生活を豊かにしてくれますが、過度のストレスは肉体だけでなく心理的な負担にもつながります。
ストレスコーピングを活用し、日頃からストレスと向き合う方法を見つけておくと良いでしょう。

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