安全衛生委員会とは?設置義務化の基準、メンバー構成、進め方などを分かりやすく解説

人事の基礎知識

安全衛生委員会とは

企業が産業保健活動のために設置する委員会には、衛生委員会・安全委員会・安全衛生委員会の3種類があり、設置の基準はさまざまです。

衛生委員会においては、1972年公布の労働安全衛生法により、従業員50人以上の企業は業種を問わず設置を義務づけられています。また安全委員会は、業種によって設置基準が異なります。そして、安全委員会・衛生委員会のどちらも設置義務がある企業において、安全委員会と衛生委員会をまとめてひとつに設置できるのが、安全衛生委員会です。

法令で決められているために、形式的に設置している企業も少なくありませんが、健康経営の重要性が認識されるにつれて、安全衛生委員会の見直しを進める企業も増えています。

安全衛生委員会の目的

衛生委員会の目的は、従業員の健康や安全を守るために必要な対策について労使が一体となって話し合うことです。また、安全委員会では、安全に関する規定・安全計画・安全教育など、労働者の安全について話し合います。

そして、安全委員会・衛生委員会2つの目的を併せ持つのが安全衛生委員会です。ちなみに安全衛生委員会の文脈でいう労使とは、「一般従業員(労働者)」と「人事権を持つ管理職以上(使用者)」を指します。

どのようなメンバーで構成されるのか

安全衛生委員会では、安全委員会・衛生委員会の2つの役割を併せ持つことから、両方の委員会に必要なメンバーを揃えている必要があります(以下、安全衛生委員会のメンバー参照)。議長は統括安全衛生管理者が務めますが、統括安全衛生管理者が不在の場合は、総務部長や人事部長などバックオフィスの管理職が務めます。委員の任期は特に決められていませんが、1〜2年周期で入れ替わる運用をする企業が多いようです。

議長以外のメンバーは事業者が指定しますが、その半数は労働者の過半数を代表する労働組合の推薦にもとづいて指名する必要があります。労働組合がない場合には、労働者の過半数以上の推薦にもとづいて指名します。安全衛生委員会が事業者にとって都合のいいメンバー構成になり形骸化しないよう、法律で定められているのです。

安全衛生委員会のメンバー

安全衛生委員会において必要なメンバーと役割は以下の通りです。

安全委員会衛生委員会役割
統括安全衛生管理者委員会を統括管理する役割で、議長を担当。
安全管理者事業場を巡視して安全対策を講じたり、従業員に正しい作業法を教育したりなど、安全に関する取り組みを行う。
衛生管理者定期的に事業場を巡視し、衛生上の懸念事項を改善したり、従業員の健康を管理したりなど、衛生・健康に関わる取り組みを行う。
産業医・産業保健師健康診断や面接指導などを実施し、労働者の健康を管理する。労働者の健康障害が起きた場合は、その原因の調査も行う。
労働者現場の問題点を伝え、対策に関して労働者として意見を述べる。委員会で定めた取り組みや決定事項について現場に持ち帰って伝える。

主な取り組みと話し合いの内容

安全衛生委員会においての議題や取り組む内容は、年次の安全衛生年間計画書にまとめられます。計画書には職場巡視や教育の実施もスケジュールを盛り込んで、計画的に実施しましょう。また、法令上決められている事項がありますので注意が必要です。

安全委員会では、調査審議事項として次のように定められています。

  1. 安全に関する規程の作成に関すること。
  2. 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、安全に係るものに関すること。
  3. 安全に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関するこ と。
  4. 安全教育の実施計画の作成に 関すること。 など
  1. 衛生委員会、調査審議事項として次のように定められています。
  2. 衛生に関する規程の作成に関すること。
  3. 衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること。
  4. 衛生教育の実施計画の作成に関すること。
  5. 定期健康診断等の結果に対す る対策の樹立に関すること。
  6. 長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。
  7. 労働者の精神的健康の保持増 進を図るための対策の樹立に 関すること。 など

どちらも労働者を守るための安全・衛生上の規程の作成や、教育に関する計画の作成が含まれています。そして、年次での計画の実行結果の評価を行わなければなりません。

安全衛生委員会の進め方

安全衛生委員会は毎月1回以上、原則的に業務時間内に実施しなければなりません。通年で毎月取り上げるべき議題は、産業医による職場巡視の報告や以前の指摘事項の改善結果、労災の発生状況やヒヤリハット事例と対応策の共有、長時間労働者の人数と対応、メンタル不調者や休職者復職者の人数と対応などです。加えて、年次計画で決めた月ごとの重点項目が議題となります。職場で労災事故などがあって臨時に開催する場合は、当該事故の調査計画や調査結果の報告・検討が行われることもあるでしょう。

そして、開催後の対応として重要なのが議事録の作成です。作成した議事録は産業医の署名・捺印の後、3年間保存しなければなりません。また議事録の内容は、従業員に周知する必要があります。周知の方法は、掲示板への掲出・書面での通知・社内メール・社内報・社内イントラネットへの掲載などが考えられます。また議事録の保存は、労働基準監督署の立ち入り検査などが入った際の確認項目になっているので、忘れずに保存しましょう。

設置時の注意点

安全衛生委員会において、法令で定められている運営のポイントは以下の通りです。

  1. 毎月1回以上業務時間内に実施する
  2. 議事録を作成し産業医の署名・捺印を得る
  3. 議事録の内容を従業員に周知する
  4. 議事録は3年間保存する

しかし、労働基準監督署の調査では正しく運営されていない例が多くみられます。なかでも多いのが運営規程の未整備です。運営規程は、安全衛生委員会の調査・審議すべき内容のひとつです。また委員会の労働時間外の開催は、残業と見なされ、残業代の支給も必要になりますので注意しましょう。

テーマが無くなったら

安全衛生委員会の運営おいて大事なのは、それぞれの企業で抱えている問題を解決に導けるようなテーマを設定することです。例えば、建築・接客サービス・製造など立ち作業で重い物を運ぶことが多い業種であれば腰痛の予防・対策、IT業界などパソコンに長時間向き合っている業種であればVDT症候群(IT眼症)の予防・対策といったテーマが考えられます。

また、議題となるテーマが尽きてしまいテーマを探す工夫が必要な場合もあります。そんな時は定期的にアンケートを実施して、従業員の悩みや関心事を把握できるようにすると良いでしょう。さらに自社特有のテーマだけでなく、季節ごとの体調不良や衛生面での問題事項をとりあげるのもおすすめです。健康診断やストレスチェックの結果を踏まえたテーマや、感染症や法令改正のような時事的話題にまつわるテーマを取り上げる場合もあります。例えば、年度初めであれば新入社員に向けて安全衛生教育の基本やコミュニケーションの取り方、夏場ならインフルエンザやノロウイルスなどの感染症対策・熱中症対策、時事的なテーマなら新型コロナウイルス感染症を踏まえた感染症対策、働き方改革とからめて長時間労働の上限規制などのテーマを検討してはいかがでしょうか。

まとめ

安全衛生委員会は、労働安全衛生法で設置が定められていることから、形式的に運営されている企業も少なくありません。しかし、労働者の安全衛生を守る企業姿勢の重要性が認識されるにつれ、安全衛生委員会の見直しをすすめる企業が増えています。

従業員が安心して働ける環境を整備するため、安全衛生委員会は非常に重要な場です。安全衛生委員会の意義を理解した有意義な運営で、誰もが働きやすい職場を目指しましょう。

関連記事

特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP