人が何かするにあたり、多くの場合その行動には理由や法則性があります。
例えば、仕事の途中報告を上司にしない社員をイメージしてください。
途中報告をしない理由として、次の理由などが考えられます。
・上司と話すと緊張する
・納得できるものになるまで仕上げたい
・上司が威圧的
行動の理由は色々ありますが、理由を特定して行動の成り立ちを説明できれば、その行動を変えることにつながるはずです。
こういった人間が行動する理由や法則性、行動パターンを研究することは行動科学と呼ばれます。
先の例は心理学ですが、マーケティングで使われるように経済学をはじめ、幅広い学術分野が行動科学に含まれます。

行動科学の歴史

学術分野によって違いますが、行動科学としての心理学の起源はハーバード大学の心理学者ワトソン(J. B. Watson)にあります。
ワトソン以前の心理学では、実験対象者がどのように感じたかを話させるという方法で実験を行っていました。
ただ、これは実験対象者の言葉の表現や感覚、時には思い込みによって結果が影響されてしまいます。
それをワトソンは批判して、客観的に観察できる「行動」に焦点を当て、刺激によって行動がどのように変わるかという観点から研究を行いました。
そして、自身の研究立場を行動主義と名乗りましたが、これが後の行動科学となったのです。
「刺激」の部分は、行動科学でいう「行動の理由」に通じるところがありますね。
行動主義の理論の代表的な理論に、条件づけがあります。
例えば好きなピザであっても、ある日ピザで食あたりを起こしたら、しばらくはピザを食べるのを控えるようになるでしょう。
本来はピザ=美味しいはずだったのに、食あたりという刺激が加わった結果、ピザ=食あたりする嫌なものとなり、ピザを避けるように行動が変わったと説明できます。

行動科学の現代的応用

しかしながら人間の行動を説明するにあたり、「想いや感情」は無視できません。
そのため、「行動」だけを扱うワトソン時代の行動科学は見直されました。
「想いや感情」はアンケートで数値を用いて測定したり、血圧や脈拍などの生理指標で測定したりするなど行われています。
そうして現代の行動科学は消費者行動や医療保健行動、犯罪行動などにおける問題を解決するために日々研究が行われています。
例えば、消費者が特定の商品を好む理由や、医療現場で患者が治療を受ける動機づけについてなどの研究が行われています。

文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒
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