クレッチマーの性格類型論とは
クレッチマーの性格類型論とは、ドイツの精神科医であるクレッチマー (Ernst Kretschmer, E.) によって提唱された理論です。
精神医学者としての臨床経験から、患者さんの症状には特定の体格や性格が関係していること、そして特定の体格と性格の結びつきは健常者にも認められることに気づきました。この気づきから、特定の体格が特定の性格と結びついているというクレッチマーの性格類型論を主張したのです。
クレッチマーが発見した3つの性格
クレッチマーの性格類型論では以下の3つの性格があります。
・肥満型
躁うつ病の患者さんには「肥満型」が多い。このタイプには背が低い、丸みを帯びている、脂肪が多いなどの体型的特徴がある。性格は社交的で感情豊か、陽気な方が多い。友達と一緒にいることを楽しむ、話し上手であることなどがよく見られる。
・細長型
精神分裂病(現在の統合失調症)の患者さんには「細長型」が多い。このタイプには細身で背が高い、筋肉が少ないなどの体型的特徴がある。性格は内向的で、夢想的、神経質な方が多い。読書や静かな活動を好むことが多く、にぎやかな出来事より自分の内側の世界を大事にする傾向がある。
・闘士型
てんかんの患者さんには「闘士型」が多い。このタイプには筋肉質でがっちりしているという体系的特徴がある。性格は積極的、行動的、決断力があるなどの特徴が見られることが多いです。スポーツやアクティブな活動を好み、リーダーシップを発揮することがよく見られる。
その後の研究
クレッチマーの性格類型論の批判からスタートした研究に、シェルドン(Sheldon, W.H.)の理論があります。シェルドンも体格と性格の関連を研究した結果、以下の3つの性格を見出しました。
・内胚葉型…太った体型。社交的でリラックスした性格が多い。
・中胚葉型…やせている体型。引っ込み思案、控えめな性格をしていることが多い。
・外胚葉型…筋肉質な体型。精力的、競争的な性格をしていることが多い。
クレッチマーの批判から始められたシェルドンの研究ですが、結果的にクレッチマーの性格類型論を統計処理を用いて洗練させることになりました。なお、その後の研究では体格と性格との間にはシェルドンが発表したほどの高い関連は認められていません。
文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒