マインドフルネスとは

マインドフルネスとは、今この瞬間にだけ注意を向け、あるがままの状態を受け入れることです。今にだけ注意を向けるということは、過去の出来事への後悔や未来の不安などにとらわれないことを意味します。例えばマインドフルネスでは「今」に意識を向けやすくするため、自分の呼吸に意識を向けさせることが多いです。呼吸に意識を向けている間は、仕事の失敗などは頭に浮かんでいなくなると思います。このときの状態がマインドフルネスと表現されます。

マインドフルネスは、仏教の瞑想から発展しました。とはいえ現在主流となるマインドフルネスは仏教本来の瞑想とは異なり、ストレス低減やウェルネス促進を目的としています。

マインドフルネスの歴史

マインドフルネスは第三世代の認知行動療法と呼ばれることもあります。認知行動療法とは、不適応に至る過程を出来事や行動、認知(考え方)レベルで分析して、行動や認知を適応的なものに修正していく治療法です。マインドフルネスが認知行動療法の三世代目と呼ばれるに至る経緯は以下の通りです。

・第一世代:行動療法
問題となる行動には特定の出来事や刺激が結び付いているという考えが、行動療法のベースとなります。例えば犬が怖い幼児の場合、犬と怖くて泣くという行動が結びついています。そこで犬を怖がらなくさせるため、お母さんに抱っこしてもらったリラックス状態で犬に慣れさせることで、犬とリラックス(=怖くない)ということを結び付けていくのです。

・第二世代:認知行動療法
人間は成長するに従い、予想や期待といった強い考えを持つようになります。予想や期待といった考えは、刺激と反応の関係に入り込みます。上司からのパワハラでうつ病になった従業員を例に考えてみましょう。従業員は仕事で上手くいって良い気分のときでも、パワハラ被害の経験から上司を見かけただけで「また叱責されるかもしれない」、「自分は無力なんだ」という考えが自然と働いて、気分が非常に落ち込みます。そのため、間に入る予想や期待などの考えを変えることが治療のメインとなります。

・第三世代:マインドフルネス
認知行動療法でうつ病などを治療しても、再発してしまう患者さんもいます。偶然の失敗などから「やっぱり自分は無力なんだ」と自動的に考えてしまうことが、再発と関連していると言われています。しかし、一時的な落ち込みは誰にでも起こりうることです。それに気づき、落ち込んだ気分もあるがままに受け入れる手法として、マインドフルネスが第三世代の治療に続いたのです。

文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒
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