感情とは

感情は、それだけでひとつの大きな学術領域が成り立つほど多様なものであるため、感情を一言では説明できません。しかし、感情の捉え方として参考になる考えを     トムキンス(Tomkins, S.S.)が提唱しています。トムキンスによると、感情は行動を引き起こすものであり、動物に生まれつきプログラムされたものです。そして、感情は体を一定の状態に保つうえで必要になります。例えば、赤ちゃんは空腹になると泣きます。空腹でつらいという感情の結果として泣く行動が引き起こされる、そして不快な状態を解消して体を心地よい状態に保つのです。

ネガティブ感情とポジティブ感情の発達

トムキンスの感情についての考えは、人間の感情発達と共通するものがあります。

ブリッジェス(Bridges, K.M.B.)によると、生まれたばかりの赤ちゃんは色々な感情がまだ区別されておらず、どんな刺激に対しても興奮しか示しません。その後、生後3週間頃までにオムツの気持ち悪さや空腹のように不快な刺激にだけ反応する泣き方をするようになります。そして、生後3か月ごろまでに興奮から喜びのような快感情が分かれ、あやされると笑うようになるのです。不快な状態の解消は生命の維持にかかわるため、不快な感情が先に発達していくというのは当然のことと言えるでしょう。

ネガティブ感情とポジティブ感情の機能

ネガティブ感情が先に発達していくとはいえ、ネガティブ感情とポジティブ感情はどちらも重要であり、それぞれ異なる機能を持っています。

ネガティブ感情は、問題に対処するための行動を促します。例えば、テスト前に感じる不安は一生懸命勉強する行動につながります。一方、ポジティブ感情は社会的なつながりを維持するなどリソース確保に役立ちます。例えば、友達と過ごしているときに感じる幸福は友情関係を維持・強化するでしょう。

どちらの感情も「悪い」または「良い」というわけではありません。ネガティブ感情は問題を解決するうえで有用であり、ポジティブ感情に基づいた行動も適切に行わないとリスクを伴うことがあります。重要なのはバランスを取り、これらの感情にどう対処するかを理解することだと言えるでしょう。

文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒
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