完全主義とは
完全主義とは自己に完全性を求める性格傾向のことです。
日常的には「完璧主義」が同じ性格として挙げられることが多いですが、学術的には両者は異なります。
「璧」は「全く傷のない宝玉」を意味することから、完璧な結果を求める完璧主義は特に仕事や学業において望ましい性格のひとつと言えるでしょう。
一方、完全主義はうつ病など不適応に陥りやすい性格のひとつとして元々研究されてきた歴史があります。
もちろん完全主義にも良い面もありますが、そのような歴史から日本語でperfectionismを訳す場合は完全主義とされます。
完全主義の2要素
完全主義は2つの要素を組み合わせた性格です。
まず、完全主義のベースに完全主義的努力という傾向があります。
この傾向が高いほど、自身に高い目標を課して課題に取り組みます。
車に例えると、アクセルと言えるでしょう。
次に完全主義の適応性を左右する要素として、完全主義的懸念という傾向があります。
この傾向が高いほど、失敗を過度に恐れ、失敗のないようにしなければならないと課題に取り組もうとします。
車に例えると、ハンドル操作です。
この2つの要素の組み合わせから、完全主義者は以下の図のようにタイプが3つに分かれます。
まず完全主義的努力が低い人は、完全主義ではない人つまり非完全主義者です。
次に完全主義的努力が高いけれども、完全主義的懸念が低い人は、健全完全主義者です。
高い目標を掲げる一方で、多少の失敗であれば許容できるので、イキイキと働けます。
そして、完全主義的努力と完全主義的懸念の両方が高い人は、不健全完全主義者です。
自分が掲げた高い目標に対して、少しの失敗も許容できないため、自分の理想と現実とのギャップに苦しむことが多いと言えます。
不健全完全主義者が努力し続けるのは
課題に取り組むことで自分の理想と現実とのギャップに苦しむというのなら、なぜ不健全完全主義者は課題に取り組み続けるのでしょうか。
その理由のひとつとして、取り組んでいる自己の姿勢を高く評価していることが関係していると分かっています。
自身が掲げた目標に届かない、失敗もしているという状況であっても、課題に取り組まない自己を許容することはできないため、不健全完全主義者は高い目標を掲げて課題に取り組み続けてしまうのです。
文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒