心身症とは何か?

心身症とは、心理社会的なストレスによってもたらされる身体的な不調のことです。ストレスや心配事があると、たとえ身体に病気がなくても身体的な症状が現れる場合があります。「心身症」は、英語で「Psychosomatic illness」と言いますが、ギリシャ語の「psyche(精神)」と「soma(体)」が由来で、心と体が密接に関係していることを示しています。

たとえば、大きなテストを控えているとします。とても緊張してお腹が痛くなったり頭が痛くなったりする方もいるのではないでしょうか。心身症はこのように、胃や頭などの臓器そのものに異常はないのですが、ストレスや心配が実際の痛みを引き起こしている状態です。

心身症が人々に与える影響

心身症の一例には以下のようなものがあります。

  • 頭痛(筋緊張型頭痛、片頭痛など)
  • 過敏性腸症候群(下痢、腹痛)
  • 機能性ディスペプシア(胃の痛みや不快感)

これらの症状は非常に現実的で痛みを伴うものであり、精神的なストレスから生じる事もあります。また、通常の治療でこれらの症状が軽減する事が少なかったり、「仮病を使っている」と考えられてしまったりという問題も起こり得ます。ただ、心身症を持つ人の痛みや不快感は本物であり、生活に大きな影響を与えることもあるものです。

職場における心身症

ストレスの多い職場環境、長時間労働、高い要求度は従業員が心身症になる一因となり得ます。また、ビジネスの世界では、心身症が大きな問題となることがあります。

従業員が心身症に苦しむと、ビジネスにいくつかの影響を及ぼすことがあります。

  1. 生産性の低下:従業員が痛みや体調不良を感じると、効率的に働くことができません。これは、プレゼンティーズムという悪い状態であり、タスクの完了に時間がかかり、チーム全体の生産性が低下することを意味します。
  2. 欠勤の増加:症状のために病欠を取ること従業員が増えることも予想されます。これにより、働ける人が減り、プロジェクトの進行が遅れたり、会社の目標達成に影響を与えることがあります。
  3. 医療費の増加:企業は従業員の医療費に多くの費用をかける必要が生じます。

ビジネスの世界では、管理者が心身症を理解し職場のストレス要因に対処することで、より健康的で生産的な職場環境を作り出せると期待されます。

文責:洞内 千佳(クリニカルリサーチ/保健師)
急性期医療病院での看護師業務経験後、当社にて研究成果の実装業務に従事
東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻卒
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