「臨床」という言葉はベッドサイドを意味し、患者さんに寄り添って支援することを指します。
つまり臨床心理学とは、心の問題を抱えた人々の考えや感情、行動を理解し、支援するための心理学の一分野と言えるでしょう。
臨床心理学には以下の4つの責務があります。

①カウンセリング:主に対話を通して心の病気や障がいを持つ人々が日常生活をより良く送れるように支援する

②アセスメント:患者さんの性格や知的レベルなどを理解するために検査を行う

③地域援助:特定個人の患者さんではなく、学校や職場などのコミュニティにいる人々を支援する

④研究:①~③に関する知識や技法をより良くするために調査・実験などを行う

臨床心理学の歴史

臨床心理学のはじまりは、ウィトマー(Witmer, L.)が1896年にペンシルバニア大学に世界初の心理クリニックを創設したことです。
なおウィトマーは、世界で最初の心理学実験室を設立したヴント(Wundt, W.)の弟子です。
臨床心理学を含めた心理学が科学の一分野である以上、エビデンス(科学的根拠)が大事になりますが、臨床心理学は科学的視点のある人物から始まったと言えるでしょう。
その後臨床心理学には色々な治療派閥がうまれますが、代表的なのものは以下の3大勢力です。

・精神分析

 フロイト(Freud, S)が作った治療派閥。無意識に押し込まれた葛藤が現在の症状を引き起こしており、無意識に押し込んだ感情や記憶に気づき受け入れることで悩みの解消を目指す。

・行動療法・認知行動療法

 精神分析によるカウンセリングの効果に疑問を抱いたアイゼンク(Eysenck, H. J.)が作った治療派閥。不適応的な行動や考えの成り立ちを理解し、様々な治療技法を用いて行動や考えを適応的なものに修正していく。

・来談者中心療法

 悩みを解決するにあたり、患者さんの過去は問題ではないとするロジャーズ(Rogers, C.)が作った派閥。「いま、ここ」で患者さんが考えること・感じることにカウンセラーが共感的に理解を示すことで、患者さん自らが気付きを得て悩みを解決していく。

日常生活への活かし方

臨床心理学の知識は心の問題を抱えた人々の治療だけではなく、日常生活にも用いられています。
例えば、人との接し方や話の聞き方、気持ちの伝え方を学ぶことで、日常生活や職場で良い人間関係を築けるようになるでしょう。
また、ストレスについての考え方を身に着ければ、それまでよりもストレスへの対処法を幅広く考えられることが期待できます。

文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒
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