産業心理学とは
産業心理学とは、企業で働く人々の問題に対して心理学の専門知識や研究手法を用いることで解決しようとする心理学の一分野です。
最適な人材配置や仕事のパフォーマンス向上、人々が仕事をすることによる経済効果などを産業心理学では研究します。
性格について研究する性格心理学や、人と人のやり取りを研究する社会心理学などの基礎的な心理学の知見を応用した応用心理学と呼ばれるものに、産業心理学はあたります。
特にアメリカでは、産業心理学は臨床心理学と並び応用心理学の2大勢力と呼ばれています。
このことから、心理学の中でも非常に重要な分野として産業心理学は位置づけられていると言えるでしょう。
産業心理学の歴史
産業心理学の前身である能率心理学から考えると、産業心理学のはじまりは1800年代終わり頃からと言えるでしょう。
産業心理学の父と呼ばれるミュンスターベルク(Munsterberg, H.)が「心理学と作業能率」を、テイラー(Taylor, F. W.)が「科学的管理法の原理」を出版・発表したのが産業心理学のスタートです。
しかし産業心理学が大きく発展したのは、そこからしばらく経った第一次世界大戦や第二次世界大戦です。
前線で戦う兵士の選別、後方で製造する兵器の生産性向上や事故防止といったことを目的に産業心理学の研究は盛んに行われました。
その後は、再雇用に関連する社会的問題の解決や、産業推進を目的に産業心理学の知見は活用され続け、現在に至ります。
産業心理学はどのように役立つのか
産業心理学は以下のように各労働の行政分野における問題解決に大いに役立ちます。
・職業安定行政・・・(例)個人と仕事の相性を測る職業適性検査の開発
・労働基準行政・・・(例)ヒューマンエラーの防止や職務ストレスの軽減
・人事行政・・・(例)採用選考の方法やキャリア支援、人事評価の改善
現場で働く一人ひとりの人間を支えるミクロなことから、ひいては国の経済成長を支えるマクロなことまで様々な形で産業心理学は役立っていると言えるでしょう。
文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒