かつての動機づけの考え方の風潮

行動する理由やモチベーションは、心理学では動機づけと呼ばれます。
古くは、動機づけは外発的動機づけと内発的動機づけの2つに分けられると考えられていました。

「コーチに怒られるから練習する」といった外部からのご褒美や罰によって動機づけられる外発的動機づけは悪いものとする風潮がありました。
そして、「練習すること自体好きだ」という自己の興味や喜びに動機づけられる内発的動機づけを促進すべきだとしていました。

自己決定理論とは

二分法的に考えられてきた動機づけにアンチテーゼを唱えたのが、ディシ(Deci, E. L.)とライアン(Ryan, R. M.)の自己決定理論です。

自己決定理論では自己決定性の程度に基づいて外発的動機づけを4つの段階に分けました。
無調整の段階では、自分自身のやる気や自己決定性は全くありません。
外発的動機づけの外的調整以降は自己決定性が少しずつ高くなっていきます。
そして、自己決定性が高い段階ほどその行動の価値が自分の中に取り込まれることになり、その価値に従って行動します。

非動機づけ…やる気のない状態。

外発的動機づけ

 外的調整…ご褒美や罰を動機づけとしている段階。

      (例)コーチに怒られたくないから練習する

 取り入れ的調整…行動しないことによる罪悪感や恥といった感情を回避することを動機づけとしている段階。

         他者からの評価も含まれているが、自分で行動をするという点で

         外的調整よりも自律性が高い。

         (例)試合で負けたら恥ずかしい

 同一化的調整…その行動が重要であるという認識によって行動が動機づけられている段階。

        (例)「練習することは、将来の自分の役に立つ」

 統合的調整…その行動をすることの価値が自分の中で見出されている段階。

       テレビを見たいなど他の欲求と葛藤することはない。

       (例)迷うことなく練習する。

内発的動機づけ…行動すること自体が喜びや目的となっている段階。

自己決定性を高めるには

自己決定性を高めるうえで、以下の2つの欲求を充足させることが重要です。

・関係性の欲求…他者とのつながりを感じること

・有能さの欲求…自分自身の有能さを感じること

そのためには環境を調整することが必要であるとディシとライアンは述べています。

文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒
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