自己評価とは
自己評価とは、自分自身をどう捉え、評価するかということです。大きくは、ポジティブな評価と、ネガティブな評価に分けられます。
健全な自己評価を持つことは、以下の理由で重要です。
・自信につながる
・挫折から立ち直り、批判を効果的に処理するのに役立つ
・開かれたコミュニケーションを取ることにつながるので、より良い人間関係を築ける
そのため自己評価は、他人との関わり方や意思決定、課題への対処法など幅広い領域に影響を与え、メンタルヘルスや幸福における基盤となると言えるでしょう。
他者との比較による自己評価
自己を評価する客観的な基準はありません。そのため人は、自己評価の基準として他者を用いることがあります。これを理論化したものが、社会心理学者テッサー(Tesser, A.)の自己評価維持モデルです。
自己評価維持モデルによると、人間はポジティブな評価を維持したいという想いがベースにあります。そのため、自身に心理的に近しい者が優れた成果を上げたとき、それが自分の関わったものではない場合は自己評価が高まるとされています。例えば、自分の通っていた学校から有名人やアスリートが輩出されると誇らしいのは、この一例です。一方、自身も関与していた領域で優れた成果を近しい他者が場合、自己評価は下がります。自己評価が下がるのは苦痛を生むので、そのような状況に陥った場合、他者の評価を低く見なしたり、その領域に関与するのをやめるといった防衛的な方略を取ることが多くあります。
自己との比較による自己評価
他者ではなく自分自身が自己評価の基準となることもあります。その際は「こうなりたい」という理想の自分(理想自己)、「こうあるべきだ」という自分(当為自己)などが今の自分(現実自己)と比較されます。自己との比較による自己評価のズレを精緻化したものが、社会心理学者ヒギンズ(Higgins, E. T.)のセルフ・ディスクレパンシー理論です。「ディスクレパンシー」とは差を意味します。
現実自己といずれの自己を比較した場合であっても、差が大きいほどネガティブな感情が生まれます。理想自己との比較が大きい場合は、願いが達成されていないことを意味するため、失望や落ち込みといった感情を抱くことになります。当為自己とのズレが大きい場合は、自分はすべきことをしていないことを意味するため、動揺や不安が高まります。
文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒