社会心理学とは

社会心理学は、集団や社会の中における人間の行動や心理状態を科学的に研究する心理学の一分野です。

例えば、どんなにスポーツ好きな人であっても、就業時間中に勝手にスポーツ観戦はしないでしょう。
しかし、仮に就業中だとしても、他にもスポーツ好きの方が集まってテレビを観ているという状況なら、一緒にテレビを観る方もいると思います。
このように、人間の行動は性格だけではなく周りの人々の状況が組み合わさって決まります。

これは社会心理学の父と呼ばれるレヴィン(Lewin, K.)の『場の理論』と呼ばれるものです。
このように人間の行動を考えるうえで他者や集団の影響は決して無視できません。

個人と集団の相互作用

社会心理学の主要な研究テーマの一つは、個人が社会や集団からどのような影響を受けるか、すなわち個人と集団の相互作用を探ることです。
集団や社会が個人の心に及ぼす影響には、「自己」、「態度変容」、「対人認知」の三つの要素があります。

ここでいう自己とは、他者との関係の中における自分自身を指します。
自分では自身を慎重な性格だと思っていても、もっと慎重な性格の友人ばかりに囲まれていたら、「もしかしたら自分はそこまで慎重な性格ではないのかもしれない」と自分の認識を改めると思います。
このように他者との関わりの中で自分が形成されるのです。

態度変容は、相手によって態度を変えることを指します。
よくあるケースで言えば、家族のようなプライベートな人間と会社の人間とでは異なる態度を取る、さらに会社の人間であっても上司と同僚では異なる態度を取るといった具合です。

対人認知は他者に対する考え方や感じ方のことであり、他者との関係の中で成立するものです。
攻撃や援助、説得、魅力などまで発展した対人認知の研究対象は、いずれも他者との関係の中で初めて成立するものであり、社会心理学が扱うテーマとなります。

社会心理学の応用

社会心理学の研究成果は、実生活の多くの場面で応用されています。
例えば、マーケティングや広告における消費者行動の理解、職場でのリーダーシップの発揮、健康や環境問題に対する人々の行動変容を促すための介入方法などが挙げられます。
いずれの分野においても、個人の行動や考え方が社会からどう影響を受けるかを理解することで、より良い人間関係や社会環境の構築に貢献されていくと言えるでしょう。

文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒
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