SOCとは、Sense of Coherenseの略で、日本語では「首尾一貫感覚」と訳されます。
抱えきれないストレスにさらされ続けた時、多くの人は心身に不調を生じてしまいます。
そのような不調を防ぐため、「どうしたらストレスに耐えられるか」「ストレスに強い人はどんな特徴を持つのだろう」と、昔から様々な研究がされてきました。
今回のテーマであるSOCは、ストレス要因の有無に関わらず、すべての人の心身をポジティブな方向に向けてくれる、ものの見方にあたる能力です。
提唱者のアントノフスキーは、「健康を害する病気の原因を探り治療する」という病理学的な考え方から「すべての人を健康な状態へ近づける」ことを目指し、健康生成論を発展させた医師です。
健康生成論の中心となっているSOCは、ホロコーストでの過酷な経験を経ても健康でいられた女性たちのインタビューをもとに尺度として開発されました。
具体的には、困難も含めた、日常・人生を、
1.把握できる(理解できる)(把握可能感)
2.処理できる(処理可能感)
3.乗り越える意味があると感じられる(有意味感)
ことが出来る力といわれています。
上記を統合し、「自分の内外、人生や環境を一貫したものに感じられる」=首尾一貫感覚として捉えます。
SOCが弱いと自分の人生が「一貫していない」、たとえば日々起こる出来事に予測が立たず翻弄されたり、人生が自分で全くコントロールができないものと感じたりします。
実際にSOCの高さは、各種ウェルビーイングの高さとの関連が報告されています。

SOCの高め方

SOCの高め方はまだ研究の途中で、教育などの介入では高められなかったとする意見もあります。
ただ、高いSOCを持つ人々の経験から、困難やストレスフルな出来事を自身で把握し、意思決定をしながら乗り越えていく経験がSOCを高めていると考えられています。
例えば「上司が自分にだけ当たりが強い気がする」と感じた時、弱いSOCの方は、「当たられてつらい。あんなことをする上司はひどい。明日はどうなってしまうのだろう…」と状況に翻弄されてしまうでしょう。
その一方、強いSOCを持っている方は、以下のような考え方ができると考えられます。
・上司のあたりが強い背景を解釈したり見通しを持てる(把握可能感)
・自分や周りの資源で乗り越えられると考えられる(処理可能感)
・この経験を乗り越えることが自分の人生に意味があると思える(有意味感)

同じような困難に直面しても、メンタルヘルスへの影響の出方は個人差があります。
SOCは、メンバーや組織を理解することや、職域ウェルビーイングを高めることの助けになると期待されています。

文責:洞内 千佳(クリニカルリサーチ/保健師)
急性期医療病院での看護師業務経験後、当社にて研究成果の実装業務に従事
東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻卒
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