社会的再適応評価尺度とは

社会的再適応評価尺度とは、一年間に個人が経験した出来事のストレスの度合いを測定するための心理学的なツールです。

社会的再適応評価は心理学者ホームズ(Holmes, T. H.)とレイ(Rahe, R. H.)によって作成されました。出来事の重大さやストレスに応じて重み付けした得点を彼らは考案しました。社会的再適応評価によると、特にストレスの度合いが強い出来事Top10は以下となります。

1位:配偶者の死 100
2位:離婚 73
3位:夫婦別居生活 65
4位:拘留 63
5位:親族の死 63
6位:個人のけがや病気 53
7位:結婚 50
8位:解雇・失業 47
9位:夫婦の和解・調停 45
10位:退職 45

1年間に経験した出来事のストレス度合いの合計得点が一定の基準を超えると、疾患を発症するリスクが高まると言われています。

社会的再適応評価尺度が作られるまでの歴史

ストレスは元々「圧力」を意味する物理学の言葉でした。それが人体に及ぼす影響として使われるようになったのは、1930年代後半です。カナダの生理学者セリエ(Selye, H.)が「外界のあらゆる要求によって、身体には非特異的反応が生ずる」とするストレス学説を提唱しました。これは、例えば上司からのプレッシャー(外界の要求)のせいで胃が痛くなった(どんな原因や病気でも往々にして見られる症状)ということです。当時は、ストレスとはこのように症状が出ている状態を指しました。

その後1960年代後半では、生活上の出来事と心身の疾患との関連を検討する研究が盛んになりました。重大な出来事によって引き起こされた生活の変化に再適応することに伴う労力が、心身の健康状態に悪影響を及ぼすという考え方から、社会的再適応評価尺度が作成されたのです。

ポジティブな出来事もストレスとなる

7位に結婚が上がっているように、一般的には良いものと見なされる出来事であっても、社会的再適応評価尺度ではストレスとなる出来事として挙げられています。結婚自体はおめでたいことです。しかし、結婚に伴い住む場所や苗字が変わったり、多少なりとも配偶者の親戚との交流が生まれるなど、これまでと生活が変わることになります。
こういった変化に適応することがストレスとなるため、ポジティブな出来事も社会的再適応評価尺度ではストレスとなると考えられているのです。

文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒
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