組織心理学の成り立ち

組織心理学とは、職場などの人間関係の問題を科学的に解明し、解決策を提供する学問です。
組織心理学は産業心理学(企業で働く人々の問題に対して、心理学の専門知識や研究手法を用いることで解決しようとする心理学の一分野)から枝分かれして誕生しました。
その転機となったのはハーバード大学のメイヨー(Mayo,G.E.)らが行ったホーソン実験です。

ホーソン実験では、賃金や休憩時間、照明、温度など様々な観点から工場労働者の作業効率を上げる要因が検討されました。
その結果、従業員は業務に関連しない要因、すなわち人間関係に非常に強い影響を受けていることが分かりました。
この結果より、「これまでの産業心理学でもたらされたのは能率や生産性を向上させ、利潤を追求するための管理手法にすぎない。組織内の人々の行動や態度について体系的な研究がなされていない」と批判が起こり、組織心理学が生まれたのです。

とはいえ、産業心理学も組織心理学も仕事に関連した人々の行動を理解したり、企業組織のウェルビーイングを高めるうえで不可欠なものです。
そのため、両者を統合して「産業組織心理学」とよく扱われます。

組織心理学の代表的な理論

前述のホーソン実験の他に、組織心理学を考えるうえで代表的な理論としてマズローの欲求段階説があげられます。
マズローによると、人間の欲求は階層構造をなしており、下の階層が満たされて初めて上の階層を満たしたいという欲求が現れます。

例えば、良好な人間関係を築くのは大切なことです。
けれど、その前に食事や睡眠など心身の健康のベースができていたり、住む場所があるように犯罪に巻き込まれずに安心して生きていくことができる保証がなされていないと、人間関係に思いがいかないでしょう。
これは企業環境でも当てはまっており、まずはハラスメントのない安全な環境が確保されたうえで支援関係の構築が効果を発揮してきます。

組織心理学の意義

人々が産業の現場で示す行動や態度を組織心理学で研究することで、そのメカニズムを説明する数多くの理論がもたらされました。
従業員満足度やモチベーションの向上、効果的なマネジメントやリーダーシップの発揮、職場のハラスメント対策など、多岐にわたるテーマが現在も研究されています。
組織心理学の知識は、個々の従業員だけでなく、組織全体の健康と生産性を支えるために重要な役割を果たすと言えるでしょう。

文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒
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