3つの良いこと探しとは
3つの良いこと探し(Three Good Things; TGT)とは、心身共に健康な生き方や幸福を心理学の観点から研究するポジティブ心理学の一知見であり、幸福感や満足感を高めるための方法です。TGTでは、就寝前にその日にあった『良いこと』を3つ、どうしてそうなったか理由も添えて書きます。『良いこと』には、仕事で困ったときに同僚にサポートしてもらえて助かった、職場で高く評価されたといった出来事だけが含まれるわけではありません。新発売だから買ってみたおにぎりが美味しかった、出張先で見た風景がきれいだったなど、ささいな出来事も含まれます。
TGTの歴史・メカニズム
TGTは、ポジティブ心理学者の創始者セリグマン博士(Seligman, M. E. P.)によって提唱されました。セリグマン博士は、人々がより充実した幸福な生活を送るための研究を行っていました。「3つの良いこと探し」は、その研究の一環として開発されたものです。セリグマン博士が行ったある実験によると、1週間TGTを行うことでその後半年間にわたってうつ病患者の幸福感が向上し、抑うつ感が下がったことが報告されています。
夜寝る前に嫌なことを思い出すという人は少なくありません。良いことは往々にして見過ごされやすいですが、嫌なことはどうにか解決できないかと思い、夜寝る前などについ思い出してしまうのです。そこで、あえて良いことに意識を向けることで、見過ごされていた良いことに注意を向けます。その結果、人生は悪いことばかりではないことが思い出せるのです。
類似する概念との違い
一日を振り返るという点では、日記や筆記表現法が類似していると言えます。しかし、日記や筆記表現法では良いことだけではなく悪いことも含めて全般的に振り返ります。一方、TGTでは良いことやポジティブな出来事にのみ焦点を当てます。つまり、TGTはポジティブな視点を強調する方法という点で日記や筆記表現法とは異なると言えるでしょう。
文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒