筆記表現法とは

筆記表現法とは、ストレスフルな出来事を日記のように文章にすることによるセルフケアです。
人間には、どんな出来事であっても意味のあるものとして、自分の人生というストーリーの中で解釈したいという願望があります。しかし、強いストレスとなる出来事は受け入れがたいものです。
そこで、文章という目に見える形で表現することで受け入れやすくするのが筆記表現法です。アメリカの社会心理学者ペネベーカー(Pennebaker, J. W.)博士を中心に筆記表現法の効果は検証されました。
気持ちをスッキリさせたり、対人関係を良好にさせるだけではなく、喘息患者やリューマチ性関節炎患者の症状を緩和させるなど、身体的健康にも良い影響を及ぼすことが分かっています。

筆記表現法では、ストレスとなった出来事を4日間毎日20分ほど書きます。その出来事で自分がどう思ったか、感じたかを丁寧に書き込むことで、自分の体験として出来事を受け入れやすくする効果が高まります。

筆記表現法の効果

筆記表現法の効果は、大きくは2つあります。

・感情をスッキリさせる

他者に自分の思いを打ち明けることへの抵抗感や、自分だけたくさん話してはいけないといった抑制から、気持ちがスッキリするまで愚痴を話すというのは難しく感じる人は多くいます。しかし、筆記表現法では満足できるまで自分の感情を吐き出すことができます。

・出来事に対して新しい考え方を促す

出来事を紙に書くことで、出来事を自分と切り離して俯瞰的に考えることができます。その結果、視野が広がり、出来事に対して別の見方をすることが可能になります。これまでとは違う見方・考え方をすることで、嫌だと感じた出来事から学びを見出すこともあります。

筆記表現法のリスクとその対処

嫌な出来事に遭遇したときの感情を書きだすということは、その状況を再体験することと近い状況です。そのため、一時的にネガティブな感情が悪化してしまう恐れがあることが指摘されています。
こうしたケースでは、その出来事から得た学びに焦点を当てることで、出来事の追体験によるネガティブな感情を弱めるという方法が開発されています。

文責:胡 綾及 (クリニカルリサーチ) 心理学博士
大学院でパーソナリティ心理学を専門として博士号を取得後、当社参画
広島大学大学院博士後期課程卒
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