今回より人事などの管理部門・管理職者向けに、「上司との関係に困った社員のサポートマニュアル」として、実際相談事例を参考にしながら対応例を解説・紹介していきます。
自社に当てはまる例がないか、もし同様のケースが起きていた場合にも、こちらで紹介した対処方法を参考にしてみてください。
Vol.1 厳しい上司に意見をはっきり言えず、なんでも「はい」と言っているが苦しんでいるケース
初めに、厳しい上司に意見をはっきり言えずに、「はい」と肯定的な返事をしているものの実際は精神的に苦しんでいるというケースを取り上げます。
全て同様の状況ですが、以下のようなご相談が寄せられます。
※個人情報に配慮し内容は意図が変わらないように少し変えさせていただいております
- 厳しく怒られると、「はい」「すみません」などと言いその場を凌いでいる。しかし実際は理不尽さを感じているし、なぜ自分ばかり?と思っている
- 本当は自分は違う意見を持っていても、「はい」というしかない雰囲気を感じている
- 周りの同僚もそうしているから、上司の意見には「はい」というしかない、誰も逆らえない空気がある
これらのケースから受け取れることをそれぞれ詳しくみていきましょう。
感情が抑圧されている
ご相談を聞いていく中で、「腹が立っていた」「話を聞いてもらえず悲しかった」などの感情を吐露される方も多くいらっしゃいます。
意見をはっきりと言えずに悩んでいる方の中には、感情が抑圧され続けているという方が多いことがわかります。
長期的に感情が抑圧されることによって、対人関係をうまく築けなくなったり、幸福感やウェルビーイングの低下がみられたりなど、社会的にも精神的にも悪影響を及ぼすことが関西大学大学院の過去の研究からわかっています。
さらにお話を聞いていく中でも「上司とうまくいかない」と感じている方や、「物事を楽しいと感じない」という方もいらっしゃるため、精神的に悪影響を及ぼしていることがわかるでしょう。
参照:関西大学大学院心理学研究科,吉津潤,感情抑制と対人関係機能,well-beingとの関連について
実際には自分自身の意見を持っている場合が多い
「はい」と言って厳しい上司に何も言えなくなっている方の中には、自分自身のまとまった意見を持っている方もおり、お話を聞くなかで打ち明けていただくケースも少なくありません。
また多いのが、周りに合わせなければという空気感を感じており、何も言えなかったというケースです。
周りが上司に対して「はい」と言っているのであれば、自分もそうしなければならないというような同調圧力を感じて、もともと頭にあった自分自身の意見は言えないままという状況です。
管理部門・管理職者が社員に対してできること
会社の体制によりできることは異なりますが、ここからは管理部門・管理職者が社員に対してできることを紹介します。
- 上司はまず社員の意見を聞く
- 社員が周囲に悩みを打ち明けやすい環境を作る
それぞれ解説します。
上司はまず社員の意見を聞く
上司の意見に押されて「はい」というしか無くなっているだけで、実は個人個人は意見を持っていたという場合は多くあります。
そのため、上司としてまずは社員の意見を初めに聞くようにしましょう。
社員一人一人の意見は重要で、正しいか間違っているかではなく、個々の働く意欲を落とさないためにも適切に聞いてあげることが大切です。
ただ「聞くだけで何もしてくれない」と受け取られる場合もあるので、この部分は参考にできそう、など意見を参考に反映させていくことも必要でしょう。
社員が周囲に悩みを打ち明けやすい環境を作る
上司には言いにくいことでも、同僚や同じ立場の仲間がいると、悩みを打ち明けやすくなります。
自分の立場や職場の環境などへ理解のある、同僚や仲間がいることで理解を得やすく、心理的なストレスからも解放されやすくなるでしょう。
また人事や総務部などの働く部署とは少し離れた部署に、相談できる窓口を設けるのも良いでしょう。
敢えて同じ立場にいない人だからこそ、打ち明けやすい内容もあります。
社員が意見を言えずに抑圧されて、精神的なストレスを抱えすぎないためにも、なるべく多く悩みを打ち明けやすい環境を作るようにしましょう。
また、そのためにも適切な休暇をとらせてあげることも重要といえます。
まとめ
今回はVol.1として、「厳しい上司に意見をはっきり言えず、なんでも『はい』と言っているが苦しんでいるケース」について取り上げました。
次回以降も人事などの管理部門・管理職者向けに、「上司との関係に困った社員のサポートマニュアル」として、実際の相談事例を参考にしながら解説していきます。
職場の体制や状況によっては、すぐに対応できないかもしれませんが、ぜひ今回の内容を参考にして社員の思いへ耳を傾けてみてくださいね。