本記事では、弊社(ユナイテッド・ヘルスコミュニケーション株式会社)のストレスチェックデータをもとに、高ストレスと退職意向の関係を解説します 。
今回の結果は、1回のアンケート回答から、項目間の関係性を統計的に推測したものです。「どちらが原因でどちらが結果か」という因果関係を厳密に確認したものではなく、対象者の在職状況を追跡した調査に基づくものではありません。 高ストレス状態は、単なる個人の不調にとどまらず、仕事のつらさを理由とした退職意向の上昇と強く関連しています 。特に企業データを分析すると、高ストレス率が一定水準を超えた段階で、退職意向のバラつきが大きくなり、組織によって明暗が大きく分かれることが確認されました 。このような場合、企業にとって重要なのは、個人ケアに留まらず、組織全体としての対策を講じることです 。
高ストレス者は退職意向を持ちやすいのか
結論から言えば、高ストレス者は退職意向が高い傾向にあります 。ただし、その関係は単純な比例関係ではありません。
データで見る「15%の壁」:なぜ15%を超えると退職意向が高まりやすい傾向が見られるのか
弊社が2025年度に10万人に実施したストレスチェックデータ分析から導かれる重要な示唆が「15%の壁」です 。

以上は、高ストレス率と退職意向率の関係を示した散布図と呼ばれるもので、一つ一つの点は組織の平均値を表しています。15%付近から退職意向率のばらつきが大きくなり、高い組織と低い組織の差が広がり2つのグループが形成される傾向が見られます 。
① 12%までは比例関係(管理可能圏内)
高ストレス率が約12%までは、退職意向率も同程度で推移します 。この段階では、個別対応や労務管理によってコントロール可能な領域です。
② 15%を超えると非線形的なばらつきの増加
高ストレス率が15%を超えると、退職意向率の予測が難しくなり(ばらつきが大きくなり)、組織によって明暗が大きく分かれています。 つまり、ストレスの影響を強く受ける組織と、うまくカバーできている組織の差が顕著になると言えます。
③ 20%超で見られる負の循環
さらに、20%を超えると、退職意向率が30%近くに達する組織も現れます 。これは、離職意向の高さが組織内で新たな負荷を生み、さらにストレスを増幅させる「負の循環」が生じやすい状態と考えられます 。
離職の前兆?高ストレス組織が見落としやすい3つのサイン
企業が注意すべきは、以下のような兆候です。
- 高ストレス率が徐々に上昇している
- 部署間でばらつきがある
- 一部の組織の退職意向率だけが突出している
特に、高ストレス率が15%に近づいている場合は、早期の介入が不可欠です。この段階で対策を講じるかどうかが、組織の安定性を大きく左右します。
高ストレス者の離職意向を防ぐ対策
対策は大きく2段階で考える必要があります。
個人レベルの対応
- 面談による早期把握
- 産業医・カウンセラー連携
- 業務負荷の調整
組織レベルの対応(最重要)
- 業務設計の見直し (例 本当に必要な業務であるか再判断)
- マネジメント層の教育 (例 部下への傾聴テクニックの研修)
- 人員配置の最適化
15%を超えた段階では、個人ケアだけでは不十分です。組織構造そのものへのアプローチが必要になるのです。
ストレスチェックをどう活かすか
ストレスチェックは「実施すること」自体に意味があるのではありません。重要なのは、その結果をどう活用するかです。
よくある失敗として、
- 結果を共有して終わる
- 面談が形式化する
- 組織改善につながらない
といったケースがあります。
本来は、高ストレス率を「組織の健康指標」として捉え、従業員が働きやすい組織を作るために 活用することが求められます。
結論
高ストレスと退職意向の関係は単純ではなく、「15%」という臨界点を境にデータのバラつきが大きくなり、ストレスの影響を強く受ける組織と、うまくカバーできている組織に分かれる傾向にあります。
企業が組織を健康な状態で維持していくためには、
- 高ストレス率を15%未満に抑える
- 個人対応から組織改善へシフトする
この2点が重要です。
ストレスチェックは単なる制度ではなく、組織の未来を左右する経営指標として活用すべき段階に来ています。
よくある質問
①高ストレス者は必ず退職しますか?
必ずではありませんが、弊社が行った意識調査において、高ストレス者の一部で退職意向が高まる傾向がみられます。特に組織全体の高ストレスが15%を超える場合、そうしたリスクはより顕著になるようです。
②ストレスチェックだけで離職は防げますか?
防げません。結果はあくまで現状の関連を示すものであり、それをもとにした具体的な改善アクションが必要です 。
③高ストレス率が15%を超えた場合、人事がまず着手すべき対策は?
ストレスチェックの結果を元に、組織の課題は何か、それに対する打ち手は何かを検討することが必要です。個別のアクションよりも、組織内の仕組みやルールといった構造の見直しをしなければなりません。
