本記事では、弊社(ユナイテッド・ヘルスコミュニケーション株式会社)のストレスチェックデータをもとに、高ストレスと生産性の関係を解説します 。
今回の結果は、1回のアンケート回答から、項目間の関係性を統計的に推測したものです。「どちらが原因でどちらが結果か」という因果関係を厳密に確認したものではなく、対象者の在職状況を追跡した調査に基づくものではありません。
高ストレス率が高い組織ほど、プレゼンティーイズム(何らかの心身の不調を抱えたまま無理をして出勤しているため、本来の力を発揮できていない状態)が悪化し、生産性が低下する傾向が見られます。
特に一定の水準を超えると、その関連がより強く表れる可能性があります。
高ストレス率の上昇はプレゼンティーイズムとの関連を強めるのか?
結論として、高ストレス率が高い組織ほどプレゼンティーイズムは悪化し、生産性も低下する傾向があります。
10万人のデータ分析の結果、特に「一定の水準」を超えると両者の関連性が強まることが確認されました。
高ストレス率とプレゼンティーイズムの段階的な関係
データ分析の結果、「高ストレス率に応じて、プレゼンティーイズムとの関連の強さが異なる」ことが分かりました。

こちらの図は、高ストレス率とプレゼンティーイズム(生産性指標)の関係を示した散布図と呼ばれるもので、一つ一つの点は組織の平均値を表しています。プレゼンティーイズムは、値が高いほど本来のパフォーマンスが発揮できている状態を示します。
このグラフから分かることをまとめると、以下の表になります。
| グループ名 | 高ストレス率 | 説明 |
|---|---|---|
| 維持グループ | 12~13%まで | ・高ストレス率が上がるほど、生産性は少しずつ下がる傾向が見られました(おおよそ1%上昇で約0.8ポイント低下)。 ・生産性の低下にはさまざまな要因がありますが、そのうちストレスが関係している割合は、分析の結果約24%程度でした。そのため、この時期の生産性は、ストレスよりも「仕事のやりがい」や「設備」など、他の要因との関連が大きい可能性があると言えます。 |
| 臨界グループ | 17%前後 | ・高ストレス率が17%に近づくと、ストレスと生産性低下の関連が急に強まります。 ・組織全体の負担が高まり、パフォーマンス低下との関連が目立ち始める「ひとつの転換点」と考えられます。 |
| 加速グループ | 17%以上 | ・高ストレス率が1%増えるごとに、生産性指標が約0.7ポイント低下する傾向にありました。 分析の結果、生産性低下の大きな部分(約68%)が、ストレスと強く関連していました。 わずかなストレス増加でも、パフォーマンス低下が顕著に見られるリスクの高い状態と言えます。 |
以上のように、高ストレスとなり不調となる者 が増えることで周囲のフォロー体制に負荷がかかり、負の連鎖がチーム全体に波及します。
その結果、判断力や集中力の低下が業務品質に影響し、手戻りやミスが誘発されるのです。
なお、業種・職種によって関係が異なる場合もあり、「やりがいのある多忙(医療・教育職等)」のように高ストレスでも生産性が高い外れ値も見られました。
なぜ「高ストレス者への個別対応」だけでは不十分なのか?
多くの企業は高ストレス者への面談に注力しますが、それだけでは生産性が回復しない場合もあります。
プレゼンティーイズムは「隠れた欠勤」とも呼ばれ、表面化しにくい問題だからです。
高ストレス率が17%を超える組織では、業務量過多などの構造的課題が根底にあり、個人のケアだけでは解決できません。
結果として対応が後手に回りやすくなります。
企業が取るべき対策
データから、高ストレス率を15〜17%未満に抑えることは、有力な対策の一つと考えられます。
そのためには個人対応に留まらない「組織的アプローチ」の仕組み化が不可欠です。
例えば、高ストレス率が15%に達した時点で部署単位の業務量ヒアリングや1on1を徹底する運用フローを構築するなど、早期介入が重要です。
また、全社平均だけでの判断は不十分です。全社平均が低くても、30%を超える部署が一つあれば、そこから組織崩壊が始まるリスクがあるからです。
部・課単位で組織を見るというよりミクロな視点でデータをチェックすることが、運用の失敗を防ぐ鍵となります。
結論
高ストレス率とプレゼンティーイズムの関連性の分析から、高ストレス率は単なる指標ではなく、組織の生産性と強く関連する「重要な管理指標」であることが分かります。
組織への影響が大きくなる前に対策を講じることは、合理的な経営判断の一つといえるでしょう。
よくある質問
Q:高ストレス率が高いと必ず生産性は下がりますか?
A:必ずとはいえませんが、当社データでは、高ストレス率が高い組織ほどプレゼンティーイズムが悪化し、生産性が低下する傾向が確認されました。特に17%前後を超える領域では、高ストレス率とプレゼンティーズムとの関連がより強く見られました。
Q:プレゼンティーイズムはなぜ問題なのですか?
A:プレゼンティーイズム(何らかの心身の不調を抱えたまま無理をして出勤しているため、本来の力を発揮できていない状態)は、欠勤と違い見えにくく、長期間にわたり、組織全体の生産性低下につながりやすいためです。特に加速期に入ると、わずかなストレス増加でも、大きな成果ロスが生じているケースが多く見られます。
Q:最初に取り組むべき施策は何ですか?
A:まずは組織ごとの高ストレス率を正確に把握することです。当社データで高ストレス率とプレゼンティーズムとの関連が強まる傾向が見られた高ストレス率17%前後を一つの目安としつつ、15〜17%未満の水準を参考に維持・改善の計画を立てることです。
